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孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」、戦略企業の流出危機に青ざめる英政界
イギリス最大の強みはワクチン開発や変異株の探知、感染予測モデリングでも証明された科学力だ。英高等教育専門誌THEによる世界大学ランキングには1位オックスフォード大学、5位タイのケンブリッジ大学、12位インペリアル・カレッジ・ロンドン、18位タイのユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)をはじめ28校がトップ200校に名を連ねる。
世界トップクラスの大学に支えられた研究開発力は、ユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場スタートアップ)だけでなく、評価額100億ドル以上の「デカコーン(ユニコーンの10倍を意味する造語)」を産み落としている。その中には日本にも上陸を果たしたデジタル銀行「レボリュート」も含まれている。
昨年4月時点でユニコーンの数はアメリカ288社、中国133社、インド32社に次ぐ世界4位の27社。欧州勢ではドイツ15社、フランス8社を引き離す。しかしイギリスではアームだけでなく、AIを開発する非公開企業ディープマインドもグーグルに買収されている。テクノロジー企業を大きく育てるには米シリコンバレーのようなハイテクの集積地と巨大な資本市場が不可欠だ。
IPOが活況を呈してもロンドン市場が敬遠される最大の理由はブレグジットに代表される予測不可能な政治にある。ずさんなコロナ対策で欧州最大の18万人超の犠牲を出しながら首相官邸や官庁街では平然と飲み会が続けられ、ジョンソン首相が下院で謝罪した舌の根も乾かぬうちに野党党首を誹謗中傷して恥じないような国にいったい誰が投資するというのだろう。