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孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」、戦略企業の流出危機に青ざめる英政界
「アームのロンドンでの上場は不可欠だ。戦略的に重要な企業や主要な雇用主の保有は重要で、われわれは歴史的にあまりに無頓着だった」(保守党のアンソニー・ブラウン下院議員)。「わが国は戦略的資産を国内にとどめ、雇用を守る具体的な政策が必要だ」(労働党のデービッド・ザイクナー下院議員)。2人とも地元ケンブリッジ選出の下院議員である。
ボリス・ジョンソン英首相の報道官は「昨年、ロンドンでは記録的なIPO(新規公開株)と民間投資が行われた。企業がロンドンに上場して成長することを支援し、奨励するために懸命に取り組んでいる」と語った。しかしブレグジットで対EU貿易が激減する中、世界的な英テクノロジー企業が米市場に流出という事態になれば衝撃は大きい。
ロンドンはテクノロジー企業の評価が低い
英紙フィナンシャル・タイムズはこんな懸念を伝えている。ロンドン市場は米ナスダック、ニューヨーク市場に比べテクノロジー企業の評価が低いと広く認識される中、クワシ・クワーテン英ビジネス・エネルギー・産業戦略相はアームをロンドン市場に再上場させるよう求める声に直面している。
ダレン・ジョーンズ英下院ビジネス・エネルギー・産業戦略特別委員会委員長は同紙に「SBGがロンドン以外での上場を決定した場合、資金調達をするテクノロジー企業にとってロンドンを最も魅力的な市場にする財務省の取り組みに重大な疑問を投げかける」と懸念を示している。
ロンドン証券取引所ではIPOを活発にするため議決権種類株発行企業の上場を認めるとともに、浮動株比率の下限を25%から10%に引き下げた。「特別買収目的会社(SPAC)」も活用しやすくしたため、昨年ロンドンで上場した企業は海外送金サービス「ワイズ」、出前サービス「デリバルー」など120社以上、168億ポンド(約2兆6千億円)が調達された。
19年の35社、20年の38社を大きく上回ったことからイギリスの「IPO(新規公開株)元年」と呼ばれる。しかしアメリカのインフレ懸念で米連邦準備理事会(FRB)が利上げだけでなく、早い時期に量的引き締め(QT)に転換する見通しが強まったことから、英IPO企業の株価も惨憺たる状況となった。
GAFAMやモデルナが生まれにくい環境
短期利益を求める英市場参加者は株価が上昇するとすぐに売ってしまうため、アメリカのアルファベット(グーグル)やアマゾン、アップル、メタ(フェイスブック)、マイクロソフトといったビッグテック(GAFAM)やmRNAワクチンで一躍有名になった米モデルナのようなバイオテック企業はイギリスでは育ちにくい。