コラム

韓国で1日あたりの新規感染者数が60万人を超えた理由

2022年03月29日(火)15時29分

大統領選当日の新規感染者は34万2430人と過去最高を記録した(写真は野党候補・尹錫悦の支持者たち)Kim Hong-Ji-REUTERS

<かつて韓国が誇った「K防疫」が破綻し、文在寅政権の任期も残り1カ月となった。新政権はどんな新型コロナ対策を推進していくのか注目される>

韓国で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。2022年1月に初めて1万人を超えた1日あたりの新規感染者数は、2月19日には10万人、3月2日には20万人を超え、3月17日は621,197人と過去最高を記録した。この日の韓国の新規感染者数を韓国と日本の人口比(2020年基準で日本の人口は韓国の約2.43倍)で単純に計算すると、日本で1日に約150万人が感染したことになる。韓国の感染者数がいくら多いかが分かる。韓国の累計感染者数は2022年1月末以降感染者が爆発的に増加し、3月28日時点で1,200万人を突破した。

韓国における1日あたりの新規感染者数
kim20220329132001.jpg

筆者は2021年末に日本より韓国で新型コロナウイルスの新規感染者数が多かった理由として、韓国では新型コロナワクチンの1次接種者のうち、アストラゼネカ社製のワクチンの接種者が多いこと、韓国政府が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために続けてきた厳しい行動制限を大きく緩和したこと、韓国の気温が日本より低いこと等を挙げた(「韓国の新規感染者数が初の4000人超え。日本とは何が違うのか?」)。

では、2022年1月末以降に韓国で感染が爆発的に増え続けたのはなぜだろうか。韓国政府は1日あたりの新規感染者数が60万人を超えた3月17日に行われたブリーフィングで、1日あたりの新規感染者数が前日(16日)より20万人も増加した理由について、「専門家用迅速抗原検査」で陽性が確認された人を感染者に認めたことにより「隠れ感染者」が新規感染者に多く含まれたことと、前日に漏れた人を新規感染者としてカウントしたことが原因で新規感染者が大きく増加した」と報告した。

実際、韓国政府は感染拡大によりPCR検査が急増し、検査の処理等が限界に達すると、3月14日からPCR検査に加え、地域の病院や医院等専門機関での迅速抗原検査の陽性者も感染者と見なすように制度を変更した。3月13日までは、迅速抗原検査で陽性となった場合はPCR検査をして、ここで陽性が出た場合に初めて「感染者」として認めていた。最近は市販の抗原検査キットを使って個人自らが検査をする人も増えている。このように検査数が増え、「感染者」の基準が変更されたことが新規感染者数が急増した1番目の原因だと考えられる。

新規感染者数が急増した2番目の原因としては、新型コロナウイルスに対する韓国政府の規制緩和が挙げられる。韓国政府は経済に与える影響を考慮したうえで、「オミクロン株」による重症化率は低いと判断し、飲食店の営業時間の制限を緩和するなどの規制緩和を続けた。韓国政府が最近発表した新型コロナウイルスに対する主な規制緩和措置は次の通りである。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 2人負

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が

ビジネス

独VW、リストラ策巡り3回目の労使交渉 合意なけれ

ビジネス

日産、米国従業員の6%が早期退職に応募 12月末付
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story