コラム

安哲秀氏との候補一本化に成功し、韓国の次期大統領になるのは誰か

2022年02月03日(木)11時19分
安哲秀

2017年の大統領選でも候補だった安哲秀。妻子とともに投票を終えて Kim Hong-Ji-REUTERS

<来月に迫った韓国大統領選で、野党「国民の党」の安哲秀の支持率が急伸している。安氏を巻き込んで野党候補を一本化できれば勝利の可能性は高まる>

史上初の「非好感選挙」と言われている3月9日の韓国の第20代大統領選挙まで、残り35日と迫るなか、野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)候補の支持率が急上昇し、注目を浴びている。

安候補の支持率は昨年の12月3週目まで3.9%に留まっていたが、12月5週目は6.6%に上昇、今年の1月1週目には11.1%と初めて10%を超えた(1月2週目に12.9%まで上昇した後には低下傾向)。

shijiritu1.jpeg
出典:韓国の世論調査会社、リアルメーターのホームページより筆者作成(最近の調査日:2022年1月31日)


安候補の支持率が年初に急上昇した理由は、最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソギョル)候補の支持率が党の内紛や夫人の金建希氏の経歴詐称問題等により急落したことと、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補の支持率が自身や家族の疑惑等で伸び悩んでいることが考えられる。

1月中旬以降は尹候補の支持率が再び上昇することにより安候補の支持率は少し下落したものの、
1月4週目の支持率は10.3%で1カ月前と比べて2倍弱の支持率を維持している。

一本化すれば尹でも安でも野党の勝利

安候補の支持率上昇とともに、野党の候補一本化に対する関心も高まっている。韓国の世論調査機関「リアルメーター」が2022年1月17日に発表した調査結果によると、尹候補が野党の単一候補になると仮定した場合、尹候補の支持率は45.2%で、李候補の34.3%を大きく上回った。また、安候補が野党の単一候補になると仮定した場合でも、安候補の支持率は42.2%で、李候補の33.7%より高いという結果が出た。

このような結果からみると、尹候補と安候補が二人とも大統領選挙に立候補し、票を分散するより、 候補一本化を推進した方が、3月9日の大統領選挙で勝利する確率が高くなると言える。

kimcha2.jpeg
出典:韓国の世論調査会社、リアルメーターのホームページより筆者作成(調査日:2022年1月17日)


kimucha3.jpeg
出典:韓国の世論調査会社、リアルメーターのホームページより筆者作成(調査日:2022年1月17日)


韓国では国民が直接、大統領を選ぶことになった1987年から、候補一本化が毎回推進されており、候補一本化に成功するかどうかが大統領の当選を決める重要な鍵となっている。

候補一本化の成功事例としては、第15代大統領選挙と第16代大統領選挙に当選された金大中(キム・デジュン)元大統領と盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が挙げられる。1997年の第15代大統領選挙に立候補した野党「国民会議」の金大中氏は「自由民主連合」の金鍾泌(キム・ジョンピル)氏との候補一本化を実現させて政権交代に成功した。大統領になった金大中氏は候補一本化の代価として金鍾泌氏を国務総理に任命した。

2002 年の第16代大統領選挙でも、与党「民主党」の盧武鉉氏が野党「国民統合21」の鄭夢準(チョン・モンジュン)氏と候補一本化に成功し、支持率が急上昇した。鄭夢準氏は大統領選挙の投票前日の夜、盧武鉉氏に対する支持を撤回したものの、盧武鉉氏は強大な組織力を誇るハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)氏との接戦を制して大統領に当選した。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story