コラム

【韓国大統領選】李在明と尹錫悦の経済政策、不動産政策、労働政策を比較する

2022年02月21日(月)10時50分

与党「共に民主党」の李在明は現在、世論調査で2位と追う立場(2月16日、ソウル) Heo Ran-REUTERS

<与党候補と保守系最大野党候補の公約をまとめて比較>

3月9日の韓国第20代大統領選挙の投票日まで20日を切った。韓国の世論調査機関「リアルメーター」が2022年2月21日に発表した2月3週目の大統領選候補の支持率調査では、野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補の支持率が42.9%で、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補の38.7%を上回った。

尹候補の支持率が2月2週目に少し下落した理由は、尹候補が韓国大手紙「中央日報」と行ったインタビューが原因だという解釈が多い。

realmeternew.jpeg
出典:韓国の世論調査会社、リアルメーターのホームページより筆者作成(最近の発表日:2022年2月20日)http://www.realmeter.net/seh9ojf982iughvop98eg871/

つまり、尹候補は、「中央日報」とのインタビューで、「Q:大統領に就任したら文政権の積弊(積もった弊害)を捜査しますか」という質問に対して「A:します)」、「Q:それは政治報復になりますね」、「A:民主党政権が検察を利用してどのぐらい多くの犯罪を起こしたのか、それに対する責任を取るべきです」と発言した。その結果、李候補を支持することを迷っていた文大統領の支持層の一部が李候補を支持することになり、李候補の支持率上昇に繋がったと考えられる。

一方、韓国の世論調査会社「エムブレインパブリック」、「ケイスタットリサーチ」、「コリアリサーチ」、「韓国リサーチ」が共同で実施(調査期間は2月14日~16日、調査対象は成人1,012人)し、2月17日に発表した「全国指標調査(NBS:National Barometer Survey)」によると、2月3週目の尹候補の支持率は40%と1週間前の35%から5ポイントも上昇し、李候補の31%を大きく上回った。

kim20220220191302.jpg
出典:「全国指標調査(NBS:National Barometer Survey)」ホームページより筆者作成(最近の発表日:2022年2月17日) http://nbsurvey.kr/archives/4214

二つの調査の支持率に大きな差がある理由としては、「リアルメーター」の調査の依頼先が文政権の支持層が想定的に多いインターネット新聞サイト「オーマイニュース(OhmyNews)」であること、調査期間が少し異なること、「全国指標調査(NBS)」は毎回2社以上の調査会社が共同で調査を実施していること、「全国指標調査(NBS)」はARSではなく面接員による電話調査であること、「全国指標調査(NBS)」は回答率を高めるために最大5回まで連絡をすること等が挙げられる。

李在明、尹錫悦候補の主な公約は?

2月11日に2時間余り開かれた2回目のテレビ討論会で、李候補と尹候補は政策を競い合うよりは互いに本人や家族の不正疑惑追及に固執した。政策よりも不正疑惑に対する国民の関心が高いことがその原因であると考えられるが、今後5年間韓国を率いるリーダを評価する大事な討論会が政策よりは不正疑惑を追及する場に変わってしまったことは非常に残念である。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国の半導体関税、台湾経済部長「影響をシミュレーシ

ワールド

イランとの合意、ウラン濃縮と兵器の検証が鍵=米政権

ワールド

米財務長官がアルゼンチン大統領と会談、経済改革を評

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株上昇や円高一服受け幅広く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story