コラム

韓国大統領選、尹錫悦候補の支持率はなぜ再上昇できたのか

2022年01月27日(木)20時10分
尹錫悦

若者に好まれる候補に変身した?尹候補  Kim Hong-Ji-REUTERS

<片方に妻の学歴詐称あればもう片方に不正疑惑がらみの不審死ありと、今年の韓国大統領戦は驚きの連続。負のスパイラルを止めて最後に若者の支持を獲得するのは誰か>

大統領選の投票まで40日あまりとなった時点で、最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソギョル)候補の支持率が再び上昇している。韓国の世論調査機関「リアルメーター」が2022年1月17日に発表した調査結果によると、尹候補の支持率は40.6%で、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補の36.7%を上回り、2週間ぶりに逆転に成功した。さらに、1月24日の調査結果では尹候補の支持率は42.0%まで上昇し、36.8%であった李候補との差を広げた。

■第20代大統領選の主要候補の支持率
支持率の推移.jpeg
出典:韓国の世論調査会社、リアルメーターのホームページより筆者作成(最近の調査日:2022年1月24日)

12月3週目まで40%以上の支持率で李候補を上回っていた尹候補の支持率は12月4週目に39.7%で40%を切り、12月5週目には李候補に逆転を許した。尹候補の支持率が急落した理由は、李俊錫党代表と尹候補の側近との対立が激化したことと、尹候補の夫人金建希(キム・ゴンヒ)氏の経歴詐称問題(過去の求職活動の際に経歴を詐称した疑い)がマスコミで報道され、世論の批判が高まったからである。

「変わってみせる」

尹候補は昨年12月3日、「蔚山(ウルサン)会合」で李代表と一度は和解したものの、その後、李代表と尹候補の側近との対立が激化し、李代表は12月21日、「選対委のすべての職責から降りる」ことを表明、常任選対委員長と広報メディア総括本部長から手を引いた。

一方、尹候補の夫人金建希(キム・ゴンヒ)氏は12月26日、経歴詐称を謝罪するための記者会見を開き、過去の経歴詐称に対して「全てが私の過ちだ。許してほしい。(中略) 夫が大統領になっても、妻の役割だけを忠実に履行する。(中略) よく見せようと経歴を膨らませて誤りを書いたことがあった」と認め、謝罪した。

このような悪材料が重なって支持率が低下すると、尹候補は今年の1月3日、選対委の組織刷新のため、外部活動を一時中断すると発表した。そして、1月5日選対委を解散することを明らかにし、「今までやってきたこととは違う姿で再スタートする。(中略)20代と30代を失望させた過去を反省し、変化した尹錫悦を見せる」と語った。

選対委の解散は、金鍾仁(キム・ジョンイン)総括選挙対策委員長との決別を意味する。実際、尹候補が選対委の解散を表明した1月5日、金委員長は委員長を辞めることを表明した。そして、1月6日に開かれた議員総会で37歳の若大将李代表と電撃和解した。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story