元徴用工問題で韓国政府の代位弁済案が浮上、日韓関係は改善されるか
日本の植民地支配から解放された記念の日、元徴用工への賠償と謝罪を求める韓国人(8月15日、ソウル) .Kim Hong-Ji- REUTERS
<日韓関係は最悪で、当面その最大の障害になっているのが元徴用工への賠償金支払いのために日本企業の韓国資産を売却する裁判所命令だが、与党や財界からは関係改善を模索する声が出てきている>
10月4日、自民党の岸田文雄総裁が、第100代の内閣総理大臣に選出されてから、日韓関係の今後が注目されている。文大統領は4日、岸田総理に祝いの書簡を送り、「日韓関係を未来志向的に発展させるために共に努力しよう」と呼び掛けた。また、15日の夜には岸田首相と初の電話会談を行い、「直接会って両国の関係改善について意見を交換することを期待する」と述べた。
韓国の財界の期待感も高い。全経連(全国経済人連合会)は4日、「現在、日韓関係は歴史認識問題と日本の輸出規制等により、大きく悪化しており、最近は新型コロナウイルスの感染拡大による両国間の交流減少でさらに厳しい状況に置かれている。(中略)日本の新政府の出帆をきっかけに日韓関係が過去の難しい関係から離れて、より未来志向的な協力関係に発展できるように両国政府がさらに努力してくれることを願う。(中略)特に、岸田首相は外務大臣を歴任したこともあるので、日韓関係の改善に対する期待は大きい」と岸田政権に対する期待感を明らかにした。
また、大韓商工会議所の崔泰源(チェ・テウォン、韓国財閥3位のSKグループ会長)会長も
岸田首相に祝いの書簡を送った。大韓商工会議所が就任する日本の首相に書簡を送るのは今回が初めてのことである。
二転三転する判決
だが、日韓関係の改善は韓国側が望んでいる以上に時間がかかる可能性が高い。その理由としてはまもなく日本では衆議院選挙(10月31日)が行われるので、岸田政権が日韓関係に時間を割く余裕がないことに加え、「元徴用工訴訟問題」をめぐる日韓対立が大きな課題としてまだ残されているからだ。
同問題を巡って、日本政府は1965年の日韓請求権協定によって「解決済み」と主張しているものの、韓国の民間レベルでは日本政府への戦後補償を求める訴訟が続いており、数回にわたる判決が下された。その中でも最近の日韓対立の火種になったのが2018年に10月30日に行われた韓国大法院の判決である。
韓国の大法院は太平洋戦争中、朝鮮半島から内地に動員された元徴用工4人が、新日本製鉄(当時・新日鉄住金)に損害賠償を求めていた裁判で、1人あたり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じる判決を言い渡した。訴訟を始めてから13年ぶりの判決である。この判決により、新日本製鉄の韓国内の資産が差し押さえられる可能性がでてきた。もし、差し押さえが実行されると、訴訟が進行中である他の訴訟にも影響を与える可能性が高い。
しかしながら、今年6月、ソウル中央地裁は元徴用工や遺族ら原告85人の訴えを却下した。また、8月と9月に行われた同種の別の訴訟でも原告側が敗訴した。3回続けて2018年10月の大法院の判決とは正反対の結果が出た。
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