高年齢者雇用安定法の改正と70歳現役時代の到来
高齢者は若者にない強みを発揮せよ SrdjanPav-iStock.
<定年後も70歳まで現役で働く時代がやってきた。雇用する側とされる側にはどんな準備が必要か>
2021年4月から「改正高年齢者雇用安定法1」が施行されることにより、70歳まで現役で働く「70歳現役時代」が到来することとなった。改正法の施行により企業は(1)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入、(2)70歳までの定年の引き上げ、(3)定年制の廃止、(4)70歳まで継続的に業務委託契約を結ぶ制度の導入、(5)70歳まで企業自らのほか、企業が委託や出資等する団体が行う社会貢献活動に従事できる制度の導入のうち、いずれかの措置を講じることが努力義務として追加された。
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1 高年齢者雇用安定法の正式名称は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」
「改正高年齢者雇用安定法」の期待される効果
政府が70歳雇用を推進するなど高年齢者の労働市場参加を奨励する政策を実施する主な理由は、(1)少子高齢化の進展による労働力不足に対応するとともに、(2)社会保障制度の持続可能性を拡大するためである。
厚生労働省が2021年2月に公表した「人口動態統計」の速報値によると、2020年に生まれた子供の数は前年比で2.9%減の87万2,683人にとどまり、過去最少を記録した。また、日本における2019年10月1日時点の生産年齢人口(15~64歳)は7507万2,000人で、1年前に比べ37万9,000人も減少した。全人口に占める15~64歳人口の割合は59.5%で、ピーク時の1993年(69.8%)以降、一貫して低下しており、今後もさらに低下することが予想されている。このように少子高齢化が進行し、生産年齢人口が減少している中で、70歳雇用が定着すると生産年齢人口の範囲が既存の15~64歳から15~70歳に拡大されることにより労働力不足の問題を解消することができる。また、企業にとっては高年齢者のノウハウや技能・技術をより長く活用し、若手への技術承継ができるというメリットも期待できる。
そして、70歳雇用の定着は社会保障の持続可能性を拡大する。特に、働くことで健康が維持できる高年齢者が増加すると、高齢化の進展とともに増え続けている医療や介護に関する政府の財政支出をある程度抑えることができる。実際、都道府県別の65歳以上就業率(2000年)と1人当たり後期高齢者医療費(2010年度)の関係をみた分析結果によると、高年齢者の就業率が高い都道府県ほど医療費が低くなる傾向があった。
高年齢者の労働市場参加の現状と今後の働き方
政府が高年齢者雇用促進政策を継続的に推進することにより、労働市場に参加する高年齢者は毎年増加している。2019年における60~64歳の就業率は70.3%で、7割以上の高年齢者が労働市場に参加していた。一方、65~69歳や70~74歳の就業率は2019年時点でそれぞれ48.4%と32.2%で60~64歳の就業率ほど高くはないものの毎年上昇傾向にある。
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