鬱憤社会、韓国:なぜ多くの韓国人、特に若者は鬱憤を感じることになったのか?
年齢階層別「重度の鬱憤状態」である人の割合
鬱憤を感じる理由は?
では、なぜ多くの韓国人、特に若者は鬱憤を感じているのだろうか。今回の研究チームの一員でもあるソウル大学のジャンドックジン教授は、「最近の若者は本人が持っている人的資本(能力)を発揮する機会が制限されることを前の世代より多く経験した。その結果、世の中は公正であるべきなのに公正ではない、前の世代には公正だと思った世の中が自分には公正ではないと考えながら鬱憤の数値が高まっている」と説明した。
一方、調査の責任者であるソウル大学のユミョンスン教授は、「若者は社会に参加しながら、就業などに挑戦をすることになる。しかしながら、その時、差別や排除、特恵や不正のような不公正を経験したり目撃したりしている。世の中が公正だと思えば問題なく生活できるのに, むしろそうした信念が脅かされ, 鬱憤の状態が悪化している」と説明した(「鬱憤を進める社会」ハンギョレ新聞2019年10月12日から引用)。
現在、韓国では高卒者の約7割が大学に進学し、在学中には就職の役に立ちそうなスペック積み(磨き?)に熱中する。スペック(SPEC)とは、Specificationの略語で、就業活動をする際に要求される大学の成績、海外語学研修、インターン勤務の経験、ボランティア活動、各種資格、TOEFLなど公認の語学能力証明などを意味する。
数年前までには大学名、大学成績、TOEIC成績、海外への語学研修経験、資格証といういわゆる5大スペックが就職するための必修条件であったが、最近は既存の5大スペックにボランティア活動、インターンシップの経験、受賞経歴を加えた8大スペックが基本になっているという。
しかし多くの若者は、世界一厳しいと言われる受験戦争を終え、大学に進学しても理想の仕事を見つけることが難しく、失業状態に置かれている、あるいは、パートやアルバイト等の非正規労働者として社会に足を踏み出している。問題は非正規職として労働市場に進入すると、なかなか正規職になることが難しいことだ。
多くの若者が食べていくのに精一杯で恋愛、結婚、出産(三放世代)を諦め、人間関係(就職)やマイホームを諦め(五放世代)、さらには夢や希望も諦めている(七放世代)。昔は頑張れば成功できると信じて多くの若者が頑張った。しかしながら、最近は生まれつきの不平等が拡大し、「どぶ川から龍」が出ることが難しくなった。
この筆者のコラム
少子化が深刻な韓国で育児休業パパが急増している理由 2022.06.30
深刻化する韓国の貧困と所得格差 2022.06.02
韓国で1日あたりの新規感染者数が60万人を超えた理由 2022.03.29
【韓国大統領選】李在明と尹錫悦の経済政策、不動産政策、労働政策を比較する 2022.02.21
北京五輪が韓国与党の大ブレーキに?韓国大統領選まであと1カ月 2022.02.10
安哲秀氏との候補一本化に成功し、韓国の次期大統領になるのは誰か 2022.02.03
韓国大統領選、尹錫悦候補の支持率はなぜ再上昇できたのか 2022.01.27