コラム

UAEはイスラエルから民主化弾圧のアプリ導入【イスラエル・UAE和平を読む(後編)】

2020年09月22日(火)07時40分

まるでモサドによる暗殺を前提とするような記事であるが、翌年始まった「アラブの春」によってイスラエルが危機感を深めたことは分かるとして、UAE側が関係修復を急いだのはなぜだろう。

UAEにとっても、モサドの監督下で、イスラエル企業のスパイウエアを導入したいという強い思いがあり、それが関係修復、さらに関係強化、そして今回の和平にまでつながる動きを後押ししたことは推測できる。

イスラエル企業が湾岸諸国に販売しているスパイウエアがどのように使われているか、モサドが知らないはずはない。それがムスリム同胞団の影響力を食い止めることになるのであれば、それは自分たちの任務だと考えているのかもしれない。

イスラエルとUAEなど湾岸諸国との和平の背景に、イスラエルの情報機関が民主化や人権を弾圧するアラブの強権体制を支えている構図があることは見逃すことはできない。

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プロフィール

川上泰徳

中東ジャーナリスト。フリーランスとして中東を拠点に活動。1956年生まれ。元朝日新聞記者。大阪外国語大学アラビア語科卒。特派員としてカイロ、エルサレム、バグダッドに駐在。中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『中東の現場を歩く』(合同出版)、『イラク零年』(朝日新聞)、『イスラムを生きる人びと』(岩波書店)、共著『ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか』(集英社新書)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない』(集英社新書)。最新刊は『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』
ツイッターは @kawakami_yasu

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