コラム

日本人が知らないアイルランドの「呪われた」チーム

2024年07月09日(火)18時00分
2020年のアイルランド訪問で伝統のスポーツ「ゲーリックフットボール」に参加する英ウィリアムズ皇太子

2020年のアイルランド訪問で伝統のスポーツ「ゲーリックフットボール」に参加する英ウィリアムズ皇太子 POOLーREUTERS

<アイルランドで高い人気を誇る伝統のスポーツ「ゲーリックフットボール」で驚異の11大会連続決勝負けのチームがある>

ちょっと奇妙な話だが、僕は最近、「報道されるにまで至っていない世界のニュースをいくつか」記事に書く機会があり(ニューズウィーク日本版7月16日号〔7月9日発売〕特集「まだまだ日本人が知らない世界のニュース50」)、世界で一番不運かもしれないスポーツチームのメイヨーについて書くことができてうれしかった。それでも誌面スペースが限られているために、僕は注目に値するストーリーを「伝えきれていない」という感覚をぬぐえずにいる。

僕が特集で取り上げた記事の1つは、ゲーリックフットボールというアイルランドで高い人気を誇る伝統のスポーツについて。これが世界的な競技でないことは承知の上だが、それでもアイルランドで情熱と誇りを持ってプレーされ、激しい戦いが繰り広げられる。

ゲーリック(とハーリングという競技)の統括と普及を担うGAA(ゲーリック体育協会)は、アイルランドがイギリスの統治下にあった1884年に設立された。その明らかな目的は、古代アイルランドのスポーツを復興し、クリケットやラグビーといった「外国」のスポーツ――つまり「イングランド」のスポーツ――に取って代わるということだった。

アイルランドはその後長い間、自国の伝統スポーツと共に、これらの「外国」のスポーツをすることを受け入れてきた。でも、歴史的にゲーリックの競技は特に、アイルランド人としての誇りやナショナリスト運動と結びつきが強い。

街全体がメイヨーのチームを応援したが

僕の一族はメイヨー州の出身で、ここはアイルランドでも最も貧しい地域だった。1845~52年のジャガイモ飢饉では大きな被害を受けた。現在でも州の人口は、飢饉前の1841年に比べてわずか3分の1だ。

だから、メイヨーがゲーリックフットボールという何か1つのもので非常に秀でているということは、誇りに関わる問題なのだ。僕が2006年に初めてメイヨー州を訪れた時、赤と緑のメイヨー州の旗が街のそこかしこを飾っているのを見て驚嘆したのをよく覚えている。全ての家、全ての商業施設、全ての大通りが、全国選手権決勝に進出したメイヨーを応援するように旗を掲げているように見えた。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ウェイモ、自動運転タクシー車両に現代自のEV追加

ワールド

米共和党知事の家族観は時代遅れ、ハリス氏が子なし発

ビジネス

仏ゲーム大手ユービーアイソフト株急伸、買収巡る報道

ワールド

ハマス急襲から1年、イスラエル軍 ガザで4万超の標
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大谷の偉業
特集:大谷の偉業
2024年10月 8日号(10/ 1発売)

ドジャース地区優勝と初の「50-50」を達成した大谷翔平をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 2
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」の中国が世界から見捨てられる
  • 3
    新NISAで人気「オルカン」の、実は高いリスク。投資初心者こそ「債券」を買うべき理由
  • 4
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 5
    キャサリン妃も着用したティアラをソフィー妃も...「…
  • 6
    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…
  • 7
    常勝軍団の家族秘話...大谷翔平のチームメイトたちが…
  • 8
    なぜ腰を振る? 際どいビキニで汗を流す映像を公開し…
  • 9
    「核兵器を除く世界最強の爆弾」 ハルキウ州での「巨…
  • 10
    羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 3
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 4
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 5
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 8
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 9
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 10
    羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 4
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 5
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story