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EU、結束阻むハンガリー「封じ」に本腰...親露貫くオルバン政権に波乱の予感
最もよく話題に上るのが、「核兵器」とも呼ばれる欧州連合条約の第7条を行使するというもの。EUの法の支配に体系的に違反すると、加盟国の議決権を剥奪できるという条項だ。
この条項を使うことを支持する人たちは、ハンガリーが2025年3月に制定した「LGBTパレード禁止法」が根拠になると指摘している。これは、LGBTなど性的少数者のパレードを禁止する法律だ。表現の自由の侵害、少数派の人権の侵害であり、EUの条約にうたわれた基本精神に違反しているので、第7条を発動できる──という主張である。
しかも、この「LGBTパレード禁止法」は、参加者を顔認識システムで特定し、最大20万フォリント(約8万円)の罰金を科すというものだ。
しかし、実現するかは微妙なところだ。第7条を発動するには、対象国ハンガリーを除く全会一致が必要である。1カ国でも反対したら発動できない。
イタリアのジョルジャ・メローニ首相は賛成するだろうか。現在は三党連立内閣だが、三党とも大変保守色が強い。LGBTに対して否定的な政策をとっている。
スロバキアはどうだろう。ロベルト・フィツォ首相はオルバン氏と並ぶ親露派と言われ、ハンガリーに対する制裁を「決して」支持しないと断言した。しかし、フィツォ首相の言動は、国内とEUの本拠地ブリュッセルとでは異なるという評価は、よく聞かれる。
3兆円凍結でも親露を貫く
次に挙げられるのは金融制裁だ。これはハンガリーを追い詰める手段というべきだろう。
法の支配からの逸脱を防ぐため、EUでは2020年、「欧州基金から資金を受け取るには、法の支配を尊重していなくてはならない」という、条件付きのメカニズムを採用した。
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