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タリバンはなぜ首都を奪還できたのか? 多くのアフガン人に「違和感なく」支持される現実
もしこのような制度が消えてなくなったり、後退したりしたら、人々はどのように反応するのだろうか。
都会に暮らしたエリートや、自由を味わった女性や人々は、タリバンの保守性に我慢できるのだろうか。亡命するしかないのだろうか。殺されずに抗議は可能だろうか。超保守的な地域であっても、「何も変わらない伝統」を、今後もすべての人々は望むのだろうか。
長年内戦が続いた国内で、人々が望むのは、何よりも平和と不正のない社会だろう。一番の問題は、そのような社会を、本当にタリバンは実現できるのかということだ。
社会正義を実現したいと燃える人々から、社会に寄生するダニのようなグループまで、「外国勢を追い出す」という目標で束ねてきたかもしれないが、それは達成されてしまった。
また、タリバン運動は、主に指導者への絶対的な服従をイデオロギーとしていたが、ムラー・オマルの死(2013年4月に国内で死去)は、運動の統一性を保つことが難しくなるほどの打撃だったという。現時点ではどうなのだろう。
さらに、外国からの援助が必要な国情なので、援助を受ける代償に、外国の影響は避けられないだろう。どういう影響になるのか、国民はどう評価するのか。
もし国や政権の運営がうまくいかず、内紛が起きた場合、イスラム過激派が再び台頭して、過激な思想と方法で、国をまとめようとしてくる可能性は捨てきれない。果たして、タリバンは信用できるだろうか。
ある著者は、タリバンの首都奪還より前に「持続可能な対応とは、首都のイデオロギー的な不協和音から離れて、村で、アフガニスタン人同士で、お茶を飲みながら議論し、決定するものです」と書いていた。
本当は、そのようなやり方がふさわしい社会なのかもしれない。しかし、大国や近隣国の思惑がうずまく地域で、そのような伝統的で牧歌的な方法は許されないだろう。
現代的な国づくりが厳しい土地柄
つくづく、中央アジア(とアフリカ)は、現代世界の構成基本となっている「国民国家」が、本来は適していない土地だと思う。「国民国家」とは、一つの国に一つの国民(時に民族)、一つの政府、一つの軍隊があって団結している──というような国の在り方のことだ。
フランス革命でうまれて世界に広がったこの国の在り方と思想は、ナショナリズムと深い関わりがある。「国境など(ほぼ)なく、広い地域に複数の同じような、あるいは異なるグループが共存している」という世界は、地球上から事実上消滅してしまった。
これは、遊牧民の伝統や、他の遊牧民との共生、そして遊牧民の存在そのものを破壊する力がある。そのうえ、産業革命は遊牧民を、自然に合わせた人間の一つの生き方ではなく、ただの貧困に陥れてしまった。
それと同時に、改革が難しいのは、山岳地域の特徴にも思える。結局、ソ連もアメリカも撤退したアフガニスタン。同じく山岳地域のバルカン半島と、似ているところがあると思う。
そんな世界にあって、国の統治機構がしっかりしていなければ、ロシア、イラン、中国、パキスタン、インド、その他の隣国、アメリカなど、外国の思惑にまた翻弄されてしまうのではないだろうか。
それに、アフガニスタン人同士の争いで、暴力が、女性や子どもという弱者に向かっている。国連の報告書によると、2021年上半期に同国で死傷した女性や子どもの数は、2009年の記録開始以来、どの年の上半期よりも多かったという。
再び戦乱が起きて、安定と安心が築けなければ、人々はどうなってしまうのか。
世界の最貧国の一つでありながら、何か人を惹きつける、不思議な魅力のあるアフガニスタン。
「文明の十字路」が再び「戦乱の十字路」にならないよう、願うばかりだ。
Tulips and spring in Afghanistan's Kunduz.
— sayed salahuddin (@sayedsalahuddin) April 8, 2016
Courtesy Bashir Ahmad Qasani. pic.twitter.com/27qhBwjE3K
アフガニスタンの国花、チューリップ。北部のクンドゥーズにて。短い春に咲き誇る、野生の真っ赤な花が美しい。
The Afghanistan fresh fruits#fruit #Afghan #Afghanistan #fresh #Afghanistan_you_never_see #Afghanistanyouneversee pic.twitter.com/E92b06FtQP
— Aveed Afghan (@imAveed) June 16, 2018
アフガニスタンは果樹栽培が盛んな、果物がおいしい国である。夏はぶどう、冬はざくろが有名だという。干しぶどう入りご飯もよく食べられるという。
【参考資料】
L'Insurrection talibane : guerre économique ou idéologique ?(2008)
https://www.cairn.info/revue-politique-etrangere-2008-2-page-345.htm
Afghanistan : peut-on faire la paix avec les talibans ?(2019)
https://theconversation.com/afghanistan-peut-on-faire-la-paix-avec-les-talibans-116323
Afghanistan : comprendre qui sont les talibans en 3 questions(Les Echos 2021)
https://www.lesechos.fr/monde/asie-pacifique/afghanistan-comprendre-qui-sont-les-talibans-en-3-questions-1339356
アフガニスタン 世界史の窓
https://www.y-history.net/appendix/wh1301-062.html
JICA 国際協力機構 アフガニスタン
https://www.jica.go.jp/afghanistan/index.htm
UN News
https://news.un.org/en/story/2021/08/1097902
https://news.un.org/en/story/2021/07/1096382
NATO News
https://www.nato.int/cps/en/natohq/news_186033.htm
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
※筆者の記事はこちら。
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