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なぜEUは中国に厳しくなったのか【前編】米マグニツキー法とロシアとの関係
この協定は、そういった中国国家による義務の制約を、ケースに応じて多かれ少なかれ解除することを定めているのだ。大変画期的なものであったことは、間違いない。いわば、中国を「条約」という枠にはめることで、変えていこうとするものだ。
実際に、中国の投資家に対して非常にオープンなEUと、進出した外国企業に対して参入障壁や差別的な慣行を増やしている中国との間には、大きな不均衡がある。この不均衡は、EUだけではない。アメリカも日本も、他の国々も同様である。
同条約は、自動車、輸送・健康機器、化学分野などのさまざまな製造業と、金融、デジタル技術、海事・航空輸送など、広範なサービス業を取り上げている。また、中国の国有グループは、サービスを販売する欧州企業を差別のない方法で扱うことも規定している。
今まで、中国が課してきた義務に、日本はいいなりで、アメリカは反発した。企業は「中国市場をとって技術移転を我慢するか、中国市場をあきらめて技術を守るか」の選択を迫られていた。
もし本当に中国の変化が実現するなら、日本の企業にとってもなんとありがたいことか。
しかし、EU内には「実装のメカニズムは説得力がない」という批判があった。つまり、書いてあることは立派だが、実効性に薄いという意味である。
欧州の高官は「合意はほとんど空っぽだ。これは素晴らしい意思を宣言しただけで、それ以上のものではない」と語った。
モンテーニュ研究所のアジア担当顧問であるフランソワ・ゴッドマン氏は、「中国は広範な開放の譲歩をしたが、法的な観点からは境界がない(範囲が定められていない)」という。
特に、別の交渉の対象となっている投資保護や国家と投資家の間の紛争解決については、何も書かれていないのも問題だ。
二つ目の批判は、人権問題である。これが今後の最大のポイントになる。
一言で言うと「国民を奴隷にするような政権と、投資協定を結ぶとは何事か!!」という批判だ。
ただ、この点についても、欧州委員会は無視していたわけではない。ちゃんと協定の中で考慮に入れている。
投資協定の中で、中国は強制労働と結社の自由に関する国際労働機関(ILO)の条約の「批准に向けた継続的かつ持続的な努力」を行うことを規定している。この文言は、フランスがドイツに「投資協定に賛成するための条件」として、提示したものだった。
ドイツの経団連であるドイツ産業連盟(BDI)のヨアヒム・ラング事務局長は、自身のLinkedInアカウントで、「この条約は、投資問題で団結を見せる、一つの欧州に向かう重要なステップであり、世界ルールの採用において強力なプレーヤーとなるものです」と述べた。
そして、「EUは、中国に社会的基準の問題で譲歩させた、最初のグローバルプレーヤーです」と強調している。このことは、北京が強制労働禁止条約を尊重するという約束をしたことを述べている。
ドイツ産業界も政治も、中国に対する疑念と警戒が、すでに大きくなっていたのだ。
参考記事(2021年1月):なぜEUは中国と投資協定を結んだか:国家資本主義を国際条約で取り込み、圧力をかける戦略だ
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