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クリスマスに急転直下、漁業問題も先送りのブレグジット合意の危うさ
それに、最初から存在して、目の前のブレグジットの交渉を前に忘れかけていた根源的な問いは、これから一層浮き出るかもしれない。「そこまで自発的に離婚したがったイギリスに親切にして、こちらに何の得があったのか」「極右を活気づけたり、追随したがるものが出てきたりして、EUの屋台骨をゆるがしかねないのではないか」と。
中長期的な展望で見るならば
結局、合意はどのような内容かわからないと判断のしようがないし、実際にどのような運用がなされるのか、しばらく見てみないとわからないだろう。
イギリスに関税ゼロという恩恵を与えたといっても、実は関税はあまり今の世界、特に先進国ではあまり大きなウエイトを占めていない。大事なのは非関税障壁、つまり世界のルールづくりのほうなのだ。誰がイニシアチブをとるか、世界規模で競争しているのである。
世界のルールは誰がつくるのか、ルールを制するものが、ビジネスを制すとすら言える──という現代の原則に立ち返れば、英国に対して懲罰的な措置をとらず、EUの勢力圏内に留めておかせたほうが、EUにとっては長期的な利益になるのかもしれないが......そういう大きな戦略は、わかりにくいし見えにくいだろう。
さらに、収まる気配のないコロナ禍で、平和と日常が脅かされているからこそ、目に見えやすい効果が期待されている時代なのも、不安材料である。
バルニエEU首席交渉官は、1月1日には「多くの市民や企業にとって」「本当の変化」があると強調した。それは事実に違いない。
そしてEUは、最も影響を受けたセクターを支援するために50億ユーロを予算に計上している。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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