- HOME
- コラム
- パリの欧州・EU特派員
- 欧州中央銀行(ECB)が欧州独自の決済システム構築…
欧州中央銀行(ECB)が欧州独自の決済システム構築を開始
今後は、EUの欧州委員会の競争総局(Directorate-General for Competition)と対話をしながら進めていくことになる。この部署は、消費者の利益の保護者というべき部署である。銀行は、消費者の利益のために、いかにデータ保護や取引の安全の調和を行うかを、この部署に示さなければいけない。
安全性を追求すると、莫大なコストがかかる可能性がある。
欧州情報筋は、フランス産の第3世代原発を例に出して、懸念を表明している。福島原発事故のあと、フランス原子力安全局とEUは、安全基準を大幅に引き上げたために費用がかさみにかさみ、巨額化した費用を回収できずに停滞を余儀なくされているのである。
それでも、データ保護は極めて重要なのだ。
アメリカはスノーデン事件で信用に傷がついたとはいえ、民主主義国家である。アメリカの覇権は焦りをもたらすが、同盟国だからまだ良いほうである。中国の決済システムの覇権は、独裁体制である共産党と結びついていると思わせ、まったく別の不安をかきたてる。
勝つために妥協の用意も
このように大きな困難があるものの、銀行側は、国際的な戦いで大敗者にならないように、多くを妥協する準備ができているという。
「欧州の銀行が団結したとして、さらに商人や消費者の説得が待っています」と、ある計画関係者筋は言う。「全員が繋がっています。すべての欧州の関係者の合意なくしては、何も成し遂げられないでしょう」
約2年前、2017年の後半からは、EUでは軍事方面でも、アメリカと分離していくのかと思わせる動きが起こっている。そして金融方面もしかりである。
パックス・アメリカーナが、非民主主義国家である中国によって重大な挑戦を受ける今の時代に、アメリカとEU、中国という巨人の間に立って、日本は今後どういう舵取りを迫られるのか。自ら大きなデザインの国家戦略を描く必要があるだろう。
この筆者のコラム
危機下のウクライナに「ヘルメット5000個」 武器提供を拒むドイツの苦悩 2022.01.29
冷戦思考のプーチン、多様性強調のバイデン 米欧露が迎える新局面とは? 2021.12.28
タリバン、国際資金枯渇の危機:米ドルで三重苦 アフガニスタンの財源は? 2021.08.30
タリバンはなぜ首都を奪還できたのか? 多くのアフガン人に「違和感なく」支持される現実 2021.08.26
アフガン難民はどこへ? 受け入れめぐるEU加盟国の不満といさかい 2021.08.25