- HOME
- コラム
- パリの欧州・EU特派員
- 欧州中央銀行(ECB)が欧州独自の決済システム構築…
欧州中央銀行(ECB)が欧州独自の決済システム構築を開始
「この2年間で、将来の問題に対する見方は、大幅に変化しました」と、フランスの財務省財務局の副局長は語る。また欧州当局者は「もし我々が動かなければ、5年後には『Big Tech』(GAFAやFAANGのこと)によって、ヨーロッパは支払いの分野で、完全に外されることになるだろう」とも言う。
新しいパワーによる情報収集は、従来のVISAやMASTERよりも、はるかに精度が高い(より詳細)と言われている。
さらに、影響力を増していく中国の決済ネットワークも問題となっていた。
中国では、2002年に新しい決済ブランド「銀聯(Union Pay)」が創設されて、中国国内の銀行は銀聯カードのみの発行となった。ビザやマスターカードは外国人が持ち込んだものは使えるが、中国国内ではもう発行していない。このネットワークは中国独自のもので、今では銀聯カードは日本を始めアメリカや西欧、一部のアジアの国々で使えるものとなった。
さらに中国では、AlipayやWeChat Payといったスマホ決済が急速な勢いで普及している。9割近くの普及率という数字もある(西欧では、銀行カードのタッチ決済がよく普及している)。
秘密裡の再チャレンジ
そんな時代の変化のなか、2年前から、PEPSIは極秘裏に再度進められていた。そして重要な日付となるのは2019年11月13日。欧州中央銀行の理事会が、この戦略を奨励した。民間戦略なので名前を付けなかった。この約1週間前にAFP通信が報じた記事が、初めて計画が表に出たものと言われている。
今後は、集まった約20の組織は定期的に委員会内で会合する。そしてプロジェクトの進捗状況を、より小さい規模の銀行に通知して連絡をとりながら進めていく。
今後大きく問題となるのは、コストとデータ保護である。
コストに関しては、この計画に関与しているスペシャリストによると、正確な評価が困難ではあるが、金融機関に約50億ユーロの費用がかかる可能性があるという。「このような構築は完全に新しいものです。銀行が投資を回収できるかが、最も大きな問題となるでしょう」
さらに、データ保護の問題がある。
EUはもともとデータ保護にとても熱心である。個人データの保護は世界で一番熱心で、アメリカが見習って後を追っているほどだ。
この筆者のコラム
危機下のウクライナに「ヘルメット5000個」 武器提供を拒むドイツの苦悩 2022.01.29
冷戦思考のプーチン、多様性強調のバイデン 米欧露が迎える新局面とは? 2021.12.28
タリバン、国際資金枯渇の危機:米ドルで三重苦 アフガニスタンの財源は? 2021.08.30
タリバンはなぜ首都を奪還できたのか? 多くのアフガン人に「違和感なく」支持される現実 2021.08.26
アフガン難民はどこへ? 受け入れめぐるEU加盟国の不満といさかい 2021.08.25