コラム

日本もひとごとではないイスラム教徒の土葬問題

2020年12月24日(木)10時45分

日本でも1994年5月、山梨県石和町で身元不明の自殺者を火葬したところ後にそれがイラン人イスラム教徒だったと判明し、イラン大使館が抗議する事件が発生した。現在も大分県日出町で別府ムスリム協会が土葬用墓地建設のため土地を購入したものの、住民がその下方にあるため池への排水流入など衛生面での懸念を主な理由として建設に反対。意見の対立が続いている。

人はいつか必ず死ぬ。死ねば埋葬しなくてはならない。在日イスラム教徒は既に20万人を超えたとされる。日本では死者の99%以上が火葬されるが、イスラム教徒は火葬を拒否する。一方、土葬に抵抗感を覚える日本人も少なくない。

スリランカではテロ、疫病、火葬といったさまざまな問題が仏教徒とイスラム教徒の間の敵意を増幅させ、社会の分断が進んでいる。イスラム教徒の人口が急増している日本に、これを人ごとだと軽んずる余裕はもうない。

<2020年12月29日/2021年1月5日号掲載>

プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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