コラム

陰謀論信じる反マスク派がソーシャル・ディスタンス主張、別の陰謀論が流された?

2021年05月21日(金)15時50分

陰謀論者を正面から説得するのが極めて難しいことはよく知られているが、ある意味今回の事例は、それをやってのけた。

いわゆる「カモリスト」の存在やカルトホッピング(あるカルトを脱会した人は別のカルトに入信しやすい)などが示唆するように、陰謀論にはまった人は、世界観に似たところがある別の陰謀論にはまる可能性が非常に高い。ゆえに、目には目を、陰謀論には陰謀論を、というのは、ある意味で合理的な戦略とも言える。

結局のところ、「大衆操作」?

しかし、いわゆるナッジ(人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする政策手法)を巡る議論でもよく出てくるように、これは結局のところ(それこそ陰謀論者が声高に批判するところの)「大衆操作」ではないか、という批判もありうる。

そもそも陰謀論者は陰謀論者のままで、相変わらず陰謀論に脆弱なままなのである。

また、ナッジが正当性を持つためには透明性の確保が重要だが、透明性の確保はおそらく陰謀論の陰謀論としての説得力を損ねることになろう。そもそも陰謀論同士の競争というのもありうるのである。前掲のVICEの記事によれば、「排出にマスクは効かない、やはりこれからは松葉で作ったお茶」という陰謀論がすでに登場しているそうだ。

プロフィール

八田真行

1979年東京生まれ。東京大学経済学部卒、同大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。一般財団法人知的財産研究所特別研究員を経て、現在駿河台大学経済経営学部准教授。専攻は経営組織論、経営情報論。Debian公式開発者、GNUプロジェクトメンバ、一般社団法人インターネットユーザー協会 (MIAU)発起人・幹事会員。Open Knowledge Foundation Japan発起人。共著に『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、『ソフトウェアの匠』(日経BP社)、共訳書に『海賊のジレンマ』(フィルムアート社)がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円建てシフト継続、市場急変には柔軟対応=朝日生命・

ビジネス

スイス中銀、投資方針巡り環境団体が抗議

ビジネス

トヨタ系部品各社、米関税の業績織り込みに差 デンソ

ビジネス

アングル:外需に過剰依存、中国企業に米関税の壁 国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 6
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story