コラム

ベネズエラのネット検閲、日本のジャーナリズムの危機

2019年02月27日(水)16時00分

ネット検閲の危険に極めて鈍感なのは、日本の重大な問題だと思う

ところで、最近ベネズエラ情勢に関する有識者の緊急声明というのが発表された。呼びかけ人の中には、ジャーナリスト、あるいはジャーナリズムに関わる人々が多くいるようだ。

ベネズエラは前大統領のチャベス以来、反米左翼で鳴らして米国から睨まれてきた国ではある。様々な圧力や謀略もあったかもしれない。なので、チャベスからマドゥロという社会主義路線自体の是非はひとまず措くとしよう。

しかし、ベネズエラの現政権が自らの意思で強力なネット検閲をやっているのは明らかであって、ジャーナリストと名乗る人たちが、ベネズエラ国内で果敢に検閲と戦っている人々がいるというのに、目をつぶっているのは全く解せないことだ。右翼だろうが左翼だろうが、検閲でジャーナリズムを抑圧する政権にまともなものがあるわけがない。

先日日本でもサイトブロッキングの是非が問題となったが、体を張って戦ったのは法曹や技術関係の人間、あるいは漫画家などクリエイターが多く(もちろん敏感なジャーナリストはいたが)、全体としてジャーナリズム界やリベラル方面の動きが極めて鈍かったことも気になっている。インターネットの分裂が進み、日本でも中国ライクな統制を導入する誘惑が強まるであろう今後、ジャーナリスト、あるいは左翼の多くがネット検閲の危険に極めて鈍感なのは、日本の重大な問題だと私は思うのである。

ヤフー個人から転載

プロフィール

八田真行

1979年東京生まれ。東京大学経済学部卒、同大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。一般財団法人知的財産研究所特別研究員を経て、現在駿河台大学経済経営学部准教授。専攻は経営組織論、経営情報論。Debian公式開発者、GNUプロジェクトメンバ、一般社団法人インターネットユーザー協会 (MIAU)発起人・幹事会員。Open Knowledge Foundation Japan発起人。共著に『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、『ソフトウェアの匠』(日経BP社)、共訳書に『海賊のジレンマ』(フィルムアート社)がある。

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