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NYタイムズも過激と評した「集団自決」論を説き続ける成田氏は何がしたいのか
普通の大人であれば、「そんな考えは絶対に持ってはいけない」と子どもを説諭するところだ。しかし成田氏は、自分は高齢者に自決を要求したのではなく、「切腹が社会保障改革の最短経路」と言ったことはあると前置きしたうえで、「(老人が自動でいなくなるシステムは)ありうる未来」だと述べる。そして、一定の年齢に達した高齢者の生命が奪われるいくつかの映画作品の設定に言及したのちに、「それが良いと思うなら、そういう社会を作るよう頑張ればよい」と伝えたのだった。
成田氏は、「老人が自動でいなくなるシステム」の善悪判断を保留する。しかしここは大人であれば、はっきりと悪であることを主張する場面だろう。彼が「老人は実際退散した方がいい」と主張した子供に対して「それが良いと思うなら、そういう社会を作るよう頑張ればよい」と事実上の後押しをしてしまった事実は重い。その場にいた子供たちは、社会システムとして大量虐殺を企図することは問題ないと学習してしまったのだ。
企画会場には、ひろゆき氏、番組プロデューサーの高橋弘樹氏を始め、何人かの大人たちがいた。しかし少なくともこの動画内では、この少年や周囲の子供たちに対して何らかのフォローがなされた形跡は見られなかった。高橋弘樹氏は、「日経テレ東大学」の看板番組に『Re:Hack』を企画し、成田悠輔氏を世に出した立役者ともいえる。その立役者は、大人としての責任を放棄した大人だったのだ。
「老人が自動でいなくなるシステム」
「老人が自動でいなくなるシステム」という少年が発した表現は、まさに20世紀以降の大量虐殺の本質をついている。だからこそ、この言葉は即座に否定されなければならなかった。ナチスのユダヤ人虐殺は、その虐殺という言葉の禍々しさとは裏腹に、工学的に洗練され効率的に人を殺すことができるシステムによって実行されていた。そのシステムを設計したのは、優秀な科学者やエンジニアであった。アウシュヴィッツ収容所は人間の理性や文明化過程の一つの帰結に他ならないと、ドイツの哲学者アドルノは述べた。
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