コラム

「国らしい国を作る」韓国・文在寅大統領に期待高まる

2017年05月18日(木)10時37分

文大統領が就任してまだ数日しか経っていないが、韓国の大統領官邸の仕事ぶりが激変した。今までは大統領がどこで何をしているのかは機密事項だとして、大統領が外部のイベントに姿を現す時以外どこで何をしているのか国民は知る由もなかった。大統領官邸の記者会見は報道官が行い、大統領が姿を見せることはなかった。しかし今は大統領が1日どんな仕事をしたのか日程を公開、大統領が自ら記者会見に参加した。文大統領就任から1週間、大統領は王様ではなく国民が選んだ代理人として国を経営する人だということに再三気付かされた。

大統領が変われば政府省庁も公共機関も変わる。公共機関は文大統領の公約通り、非正規職を正社員に切り替えようと動いている。5月12日には真っ先に仁川空港公社が、派遣会社経由で雇っている非正規職約1万人を公社の正規職として採用すると発表した。仁川空港公社の非正規職員らは涙を流しながら喜んだ。

仁川空港公社は開港以来、職員のほとんどをアウトソーシングしている。2017年5月時点でセキュリティーチェック、貨物運搬、警備、清掃などあらゆる分野の職員約84%が公社の入札で選ばれた派遣会社に所属している。入札は3〜5年ごとに行われるので、派遣会社が入札で落ちたら非正規職の人は職を失うしかない。韓国は正社員と非正規職の賃金・休暇といった待遇の差は2倍近くある。非正規職だといつ解雇されるかわからない不安がある。

文大統領は以前から「国民の安全にかかわる業務は必ず正規職で雇うべきで、公共機関は非正規職ゼロを目指すべき」だと主張してきた。韓国では雇用を増やすことだけでなく、増えすぎた非正規職を正規職にすることも大きな課題になっている。仁川空港公社の記者会見には文大統領もお祝いに駆けつけた。

オンラインコミュニティやポータルサイトニュースのコメント欄には「文大統領が就任してからニュースを見るのが楽しくなった」、「展開が早すぎてびっくり。やさしいだけの大統領ではなかった」、「国民を守ってくれる大統領。頼もしい」などと文大統領を応援する書き込みであふれている。文大統領に投票しなかった人も、大統領としての仕事ぶりには満足している様子だった。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

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