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「腸は第2の脳」説に有力な証拠? 「ウンチする・しない」が認知効率に影響を与えていることが明らかに

(写真はイメージです) fongbeerredhot - Shutterstock
<認知能力を競技でフルに使うトライアスロン選手を被験者とした台北市立大学の実験で、排便の有無と認知能力の関係について驚くべき結果が導き出された。研究チームはそのメカニズムをどこまで明らかにできたのか。パフォーマンスに差が出るのは「我慢しているとそわそわするから」以外にも理由が?>
腸は、食物の消化・吸収だけでなく、免疫機能やホルモンの分泌など全身に関わる重要な働きも担っていることが近年の研究で明らかになってきました。さらに脳に次ぐ多くの神経が集まっている器官であり、うつ病や認知症といった「脳の健康」とも密接な関わりを持つことも分かってきており、「第2の脳」という別名も知られてきています。
とはいえ、私たちが日常生活の中で最も腸を意識するポイントは、今でも「毎日の排便が快調かどうか」でしょう。便秘や下痢のせいで勉強や仕事に集中できない経験は誰でもありますし、腸内環境を整える「腸活」という言葉はすっかり市民権を得ています。
「快便でパフォーマンスが上がる」のは、お腹が軽くなってスッキリするからでしょうか。台湾・台北市立大学のスポーツ科学研究者らは、「ウンチをする・しないが脳の認知能力に影響するのではないか」と考え、競技中に高い認知能力を必要とするトライアスロン選手を対象に調査をしました。
すると、アスリートたちの認知能力は排便後に有意に向上し、特に市販の便秘薬にも含まれる酸化マグネシウムを服用して便通をうながすと顕著な効果あることが分かりました。研究の詳細は、中国体育科学学会が発行する専門誌「Sports Medicine and Health Science」の2025年3月号に掲載されました。
排便には脳機能を活性化する仕組みがあるのでしょうか。研究者らはそのメカニズムをどこまで明らかにできたのでしょうか。概観してみましょう。
なぜトライアスロン選手なのか
トライアスロンは、スイム(水泳)・バイク(自転車ロードレース)・ラン(長距離走)の順に3種の競技を連続して行う耐久スポーツです。個々の競技は古くから行われてきましたが、トライアスロン自体は初めて大会が行われたのが1974年という比較的新しいスポーツです。2000年のシドニーオリンピックでオリンピックの正式種目となり、日本でもよく知られるようになりました。
スイム・バイク・ランの距離の組み合わせには何種類かありますが、オリンピックに採用されている「スタンダード・ディスタンス」と呼ばれる長さは、スイム1.5キロ、バイク40キロ、ラン10キロで、合計51.5キロを競います。
24年パリ五輪での優勝記録は男子1時間43分33秒、女子1時間54分55秒ですから、およそ2時間の間、脳をフル回転させて状況を読んだりライバルと駆け引きしたりするハードな競技です。
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