最新記事
BOOKS

ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の日記に書かれていること

2025年4月16日(水)17時30分
キム・ジニョン(哲学者・美学者)
ピアノ演奏

ピアノは愛である。ピアノに応えられるもの、それも愛あるのみだ。(画像はイメージです):StockSnap_pixabay

<余命を知ったとき、残りの日々をどう生きるか。日常がシャッターを下ろすように中断されると知った時に......残ったのは「愛」だった>

ノーベル賞作家ハン・ガン氏が「しばらく外国にいたとき、この本を1日いちど、3回読んだ。毎日読んでもいい本」と話し、元東方神起のジェジュン氏がインスタライブで紹介するなどして、韓国で波紋のように広まった本がある。韓国の哲学アカデミー代表も務めた美学者キム・ジニョン氏による『朝のピアノ 或る美学者の『愛と生の日記』』(小笠原藤子訳、CEメディアハウス)だ。

病に冒され余命を知ったキム氏が、亡くなる3日前までの日々を記録した本書は、どの頁を切り取っても美しい。そこにあるのは、死に対する不安を率直に綴りつつも、世界のささやかな美を発見し、周囲の人々を愛し、人としての威厳を保ち続けようとする美学者の矜持である。

病の宣告を受けた直後の記録を一部取り上げる。(全3回の1回目)

◇ ◇ ◇

朝のピアノ。ベランダで遠くを眺めながら、ピアノの音に耳を傾ける。わたしはこれから何をもってしてピアノに応(こた)えられるのだろうか。この質問は妥当ではない。ピアノは愛である。ピアノに応えられるもの、それも愛あるのみだ。

いまわたしに必要なものは、病(やまい)に対する免疫力だ。免疫力は精神力。最高の精神力、それは愛である。

突として心がぽきぽき折れる。
秋日の枯れ木のように。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

現代自動車、一部EVの韓国内生産を需要低迷で一時停

ビジネス

ネットフリックス、業績見通し強気 広告付きサービス

ビジネス

カナダの米株購入、2月は過去最高 大型ハイテク・金

ビジネス

米FRB、ストレステスト見直しへ 自己資本比率の算
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 9
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 10
    金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中