コラム

2度目の宇宙、日本人3人目のISS船長へ...大西卓哉宇宙飛行士に聞いた、前回フライトとの意識の違い

2025年03月12日(水)21時35分

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単独インタビューに応じた大西宇宙飛行士 筆者撮影

──大西さんは2020年にJAXAフライトディレクタ(ISS「きぼう」実験棟を地上側から運用統括する役務)となり、地上業務のスペシャリストとしても認定されました。今回のISS滞在決定後の記者会見では「前回(2016年)のISS滞在では地上の動きを想像できなかった」「地上と息を合わせることの大切さが分かった」と話していらっしゃいました。

フライトディレクタを経験した今だからこそ分かる「地上クルーが宇宙飛行士に気遣ってほしいこと」や、「それを踏まえて今回のISS滞在ではこのように任務を果たしたい」という意気込みを教えてください。

大西 宇宙飛行士が思ってる以上に、地上は全体のタイムラインの中で動いています。その中で、私たち宇宙飛行士のタスクが少しゆっくり進んでしまったために時間が押してきてしまった時のインパクトは、地上では結構大きかったりします。


宇宙飛行士の仕事が終わった後に、やっと地上で遠隔で実験が始まるケースはよくあります。僕らの作業が長引くと玉突きでどんどん遅くなったり、地上と軌道上(宇宙=ISSのこと)で交互に作業していくようなタスクもあったりするので、そういうときに1個1個の進捗状況はとても大事です。

だから「地上はどういうところを気にしてるか」というところを、僕は今すごく分かっているので、例えば作業が遅れ気味だったら自分が次にやる予定の他の作業と優先順位を入れ替えて、軌道上から「こんなふうに順番を変えてやるのはどう?」と提案するような対応ができると思います。そこが自分の強みです。

──それは他の搭乗クルーと共有することで、今回のISS第72次/第73次長期滞在チームのメリットにもなりそうですね。

大西 そうですね。前のフライトのときよりも、「全体の絵」がもっとちゃんと見えているので、貢献できると思います。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

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