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常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?
天然のダイヤモンドは数百万年~数億年かけて成長する(写真はイメージです) 123dartist-Shutterstock
<韓国の基礎科学研究院・多次元炭素材料センターや蔚山科学技術院などから成る研究チームが、新しい合成ダイヤモンドの作成法を発表。その詳細と合成ダイヤモンド開発の意義について概観する>
ダイヤモンドの生成には、高温高圧条件(およそ1000~1500℃、5万気圧)が必要です。地球上で5万気圧を達成できる場所は地下約150キロ付近なので、天然のダイヤモンドは地球深部のマントルで作られます。
ダイヤモンドは美しさを活かして宝石になるだけでなく、一般に入手できるものとしては地球上で最も硬い物質なので、ダイヤモンドカッターや研磨剤など工業用途で広く使われています。ただし、生成条件が狭く、条件を外れると化学組成が同じで結晶構造が異なるグラファイト(黒鉛)になってしまうため、希少性が高く高価です。そこで研究者たちは古くから、ダイヤモンドを人工的に合成して安価に入手できないかと模索してきました。
これまでに商業化されているダイヤモンド合成法には、高温高圧法(High Pressure High Temperature, HPHT法)と化学蒸着法(Chemical Vapor Deposition, CVD法)があります。HPHT法は地球深部の高温高圧環境を実験室に再現してダイヤモンドを成長させる技術、CVD法はメタンと水素の混合ガスを使って高温低圧(大気圧以下)で種結晶の表面にダイヤモンド結晶を析出(せきしゅつ)させる技術です。
今回、韓国の基礎科学研究院・多次元炭素材料センターや蔚山科学技術院などから成る研究チームは、「第3のダイヤモンド合成法」とも言える「液体金属合金を使って、常圧(大気圧)で種結晶を使わずに短時間でダイヤモンドを作りだす方法」を開発したと発表しました。研究成果は総合科学学術誌「Nature」に4月24日付けで掲載されました。
新しい合成方法の詳細と、合成ダイヤモンドを開発する意義について概観しましょう。
合成ダイヤモンドの歴史
ダイヤモンドの合成法は、19世紀末から何人かの研究者によって実験されていました。ダイヤモンドを地上まで運ぶキンバーライト(母岩)の性質や、隕石中にダイヤモンドが見つかることから、高温高圧が必要であることは早くから知られていましたが、実験室での合成成功にはなかなか至りませんでした。
世界で初めてダイヤモンドの合成に成功したのは、HPHT法を発明したアメリカのジェネラル・エレクトリック社で、1955年のことでした。
ダイヤモンドの種結晶を使って、原料となる炭素物質(黒鉛や微小なダイヤモンド)を金属溶媒に溶かし、高温(1500℃程度)、高圧(5~6ギガパスカル[概ね5~6万気圧])を与えて、ダイヤモンド結晶を成長させます。工業用の研磨剤とするために、種結晶を用いずに1ミリ以下の微小な結晶を多量に作成する場合もあります。
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