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常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?
一方、CVD法は、52年にアメリカのユニオン・カーバイド社が考案しました。80年代前半に日本の無機材質研究所(現在の国立研究開発法人物質・材料研究機構)がプラズマCVD法を開発して、CVD合成ダイヤモンドの商業化を大きく前進させました。
ダイヤモンドの原料となる炭素源であるメタンガスを大量の水素と混合し、この混合ガスを大気圧以下(0.1~1気圧程度)で反応容器に満たし、プラズマで分解して活性化します。種結晶となるスライスしたダイヤモンド結晶(基板)上の温度を800~1200℃程度に保ち、基板表面に炭素原子を降らせて結晶化させます。水素はダイヤモンドが黒鉛に変化するのを防ぐ役割を果たします。
天然のダイヤモンドが数百万年~数億年かけて成長するのに対し、HPHT法やCVD法では数日から数週間程度で同じ程度の大きさの合成ダイヤモンドが得られます。合成ダイヤモンドは中国産が最も多く、コロナ禍前の2019年には約154億カラット(1カラットは0.2グラム)を生産しました。
製造時間は従来の12分の1
今回、韓国の研究チームが開発したダイヤモンドの合成法は、メタンガスと水素で満たした小型チャンバーに、ガリウム、ニッケル、鉄、ケイ素の4種から成る液体金属合金を入れるというものです。
必要な圧力と温度は常圧(大気圧)で約1025℃、種結晶を使わずに従来の合成法の12分の1の製造時間でダイヤモンドを作成できました。上記の4種の元素を77.75%、11%、11%、0.25%(原子百分率)の割合で混合したときに、最も効率よく成長したといいます。
種結晶がなくても成長する原理は未解明なところもありますが、研究者たちは「炭素とケイ素は結合に関して類似性した性質を持つので、ケイ素原子を含む炭素クラスターがダイヤモンドの前駆体として機能している可能性がある」と話しています。
もっとも、現時点ではダイヤモンドの成長が約150分で止まるため、薄膜状のみが得られています。研究チームは合成時間を延長し、サイズアップさせることを課題としています。
合成ダイヤモンドの主要な用途には、宝石用と工業用があります。宝石業界では合成ダイヤモンドは量産できるため稀少価値を認められないとして、天然ダイヤモンドとは別物として扱うことが通例です。
しかし、天然ダイヤモンドの世界最大のシンジケートであるデビアス社が18年、合成ダイヤモンドのジュエリーの販売に踏み切ったため、今後は宝石用途の合成ダイヤモンドがますます流通するようになると考えられています。さらに、合成ダイヤモンドは欲しい色や特徴をカスタムできる可能性も秘めています。
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