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推理小説の犯人当てシーンに影響? 「空気中の環境DNA」を調べれば「直前にいた人」が分かる
実験2では、人のいる部屋といない部屋で、採取時間と収集フィルターの種類をいくつか変えて、空気そのものからヒトDNAを採取できるかどうかを調べました。
その結果、ヒトDNAは空気からでも収集できることは示唆されましたが、フィルターの種類によっては居住者が2時間滞在しても検出できないこともありました。収集フィルターによる空気からのDNA採取は、フィルターの性能や置く場所だけでなく、居住空間の状態や私物の存在、活動内容などに影響されやすいと考えられるため、今後のさらなる調査が必要といいます。
研究を先導したゴーレイ博士は、「犯罪者が法医学的な知識を持っていたとしても、DNAの環境への放出を完全に阻止できる可能性は非常に低い」と話しており、この新しいDNA鑑定法は部屋への訪問者だけでなく、だれが日常的に使っていたかの特定にも役立つ可能性がある、と説明します。
その場合、空気サンプルの分析結果は最近その部屋を訪れた者を示す可能性が高く、エアコンフィルターから得られる結果は、以前にその部屋を使用していた者も検出できる可能性が高いと言います。
犯罪捜査に実装されるまでには、もっと多くの実験を行い精度を高める必要があります。けれど近い将来、推理小説では防護服に身を包んだ犯人が、環境DNAからの犯行発覚を恐れて、犯行後に部屋の空気を入れ替えたり、他人の唾液を霧吹きで拡散したりするシーンが見られるようになるかもしれませんね。
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