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日本が月面着陸に初成功、世界で5カ国目の快挙も「60点」評価のワケ...太陽電池が機能しないことによるミッションへの影響とは?
もっとも、まったく別の場所で作られた小天体が飛来して、たまたま地球の重力に捕まったとする「捕獲説(飛来説、他人説とも呼ばれる)」を主張する研究者もいます。
地球上の物質やアポロ計画で持ち帰られた「月の石」でだけでは、これ以上議論することは難しいため、月の表面で隕石の衝突や風化の影響を受けていない「月のマントル由来の石(カンラン石)」の研究が待ち望まれていました。
今回、SLIMにはマルチバンド分光カメラが搭載されており、月の主要鉱物の輝石や斜長石とカンラン石を識別しながら、着陸点周辺の岩石とレゴリス(月表面の土壌)を観測する予定でした。着陸地点は、JAXAの月観測衛星「かぐや」がかつて全球的にカンラン石の分布を調べたデータなどを使い、カンラン石を豊富に含む岩石の観測にも適した場所が選ばれました。
岩石に占めるカンラン石の比率や化学組成(鉄とマグネシウムの比)が分かれば、月のマントルの組成が推定できます。それと地球のマントルを比較したり、巨大衝突のシミュレーションをしたりすれば、月の起源の謎に迫れます。さらに太陽系形成論まで発展できる可能性もあります。
本来、マルチバンド分光カメラは着陸後数日の間、カメラの視野よりも広い月面領域を観測するためのミラーを2軸で回転するための機構、高い空間分解能を確保するためのフォーカス機構、多バンド観測を行うためのバントパスフィルタの切り替え機構などを駆使しながら観測に最適な試料を探し、撮影する予定でした。
しかし、バッテリーが数時間分しか残されていなかったため、電力はSLIM内部に蓄積された着陸データの送信に最優先で使われました。マルチバンド分光カメラの撮影は、たまたま視野に入ったものに限られたり、節電のために回転機能は使わなかったりしたようです。
つまり、月の起源の解明に関するミッションは、当初の予定よりも規模をかなり縮小せざるを得ない見込みです。
3)日本は世界に宇宙開発における技術力を示せたか
日本の宇宙開発事業は、SLIMの打ち上げも担ったH2Aロケットの成功率が97.9%と非常に優秀である一方、近年は小型固体燃料ロケット「イプシロン」6号機の打ち上げ失敗(22年10月)、超小型月探査機「OMOTENASHI」が通信途絶で月着陸を断念(同年11月)、H3ロケット初号機の打ち上げ失敗(23年3月)、民間企業アイスペースの探査機の月面激突(同年4月)、小型固体燃料ロケット「イプシロンS」が開発中の燃焼試験で爆発事故(同年7月)など、技術力への信頼を揺るがす事案が相次いでいます。
アメリカ航空宇宙局(NASA)が主導する有人月探査国際プロジェクト「アルテミス計画」や、2040年には1兆ドル規模になるとされる宇宙ビジネス市場で日本の存在感を高めるには、月面着陸、しかも世界初となるピンポイント着陸の成功は、世界各国に宇宙開発の技術力をアピールする絶好の機会となります。
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