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カーレーサーはレース中、きまって「ある場所」でまばたきしていることが明らかに
まばたきのタイミングを誤れば命を失う危険も(写真はイメージです) simonkr-iStock
<乾燥から目を守るためにヒトは3秒に1回の頻度でまばたきをしているが、最近の研究では「発生頻度は、精神状態によって大きく変化する」という指摘もある。認知科学とも結びついているまばたきの謎について掘り下げる>
人類は科学技術の力を借りて、宇宙空間や深海などの過酷な環境条件の中での活動を可能としてきました。もちろん、厳しい環境に適応するためには、ヒトも十分な訓練が必要です。
陸上で過酷な状況に置かれる職業の一つが、カーレーサーです。時速300キロにも達するフォーミュラカーを操りサーキットを周回する間は、適切ではない場所でまばたきをすれば、ドライバーは視界のないまま数十メートル進み、命を失う危険すらあります。
日本電信電話株式会社(NTT)と、カーレーシングチームを運営するダンディライアン社は、サーキットを高速周回中の複数のレーサーは、コース上の同じ場所でまばたきしていることを世界で初めて示しました。本研究の成果は米科学誌「iScience」(オンライン版)に、5月19日に掲載されました。
まばたきは目の乾きを潤したり、角膜表面のゴミを流したりする働きが知られています。けれど、最近は認知科学分野からアプローチした研究成果が多く報告されています。今回の研究とともに、まばたきの科学についても深掘りしてみましょう。
ヒトは必要回数の3倍以上まばたきしている
まぶたを開閉する「まばたき」は、医学用語で「瞬目」と書きます。英語ではwinkやblinkと呼ばれます。
そもそも眼は、角膜や水晶体のような無色透明な組織で構成されており、乾燥にとても弱い器官です。乾燥すると角膜が傷つきやすくなったり、細胞が硬化して透明性が保てなくなったりするため、生物が海から陸上に進出する際に「目を乾燥から守る方法」が必要になりました。
そこで、現れたのが目の蓋の役割を果たす「まぶた」です。まばたきでまぶたを定期的に閉じることによって、常に眼の表面を涙で潤わせて、乾燥しないようにできるようになりました。
ただし、陸生生物の中には、まぶたを持たずに独自の乾燥解消法を取得した動物もいます。たとえば、ヤモリは、長い舌で自分の眼を舐めることで乾燥を防ぎます。ヘビは、角膜の表面が透明な鱗で覆われており、まぶたがなくても保湿されています。
もっとも、ヒトはおよそ3秒に1回の頻度で自発的にまばたきをしています。1回につき0.2~0.3秒間ほど目を閉じるので、起きている時間の約10%で視覚情報が遮られていることになります。ところが、涙によって眼を潤すためには20秒に1回程度のまばたきで十分と示す研究があります。なぜ、必要回数の3倍以上の頻度でまばたきをするのかは、未だ分かっていません。けれど、目を潤す以外に理由があるはずです。
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