コラム

バレンタインに知っておきたい、チョコレートの甘くない歴史とトリビア

2023年02月07日(火)11時30分
チョコレート

女性から男性にチョコレートを渡す日本式バレンタインが定着したのは70年代のこと(写真はイメージです) chocophoto-iStock

<カカオに含まれる成分の健康効果だけでなく、GABAや乳酸菌を配合した機能性食品としても注目されるチョコレート。日本とチョコレートの接点は江戸時代の長崎に遡る。間もなく迎えるバレンタインデーを前にその歴史、健康との関係を解説する>

2月に入ると、デパートやスーパーマーケットにはバレンタインデーに向けたチョコレート菓子が大量に並びます。

日本チョコレート・カカオ協会によると、2020年の日本人のチョコレート消費量は、1人あたり年間2.1キロ。スイスの9.8キロ、ドイツの9.0キロ(いずれも2019年欧州菓子協会調べ)には及びませんが、30年前の消費量の約1.3倍になっています。

今でこそスイーツの代表であるチョコレートですが、かつては唐辛子などを入れたスパイシーな飲み物でした。近年は、糖分や脂肪分に気をつければ、健康面にも効果が期待できる食品と考えられていますが、米専門誌『コンシューマー・リポート』は1月末、メーカー4社に対して「ダークチョコレートに含まれる重金属の削減」を勧告しました。重金属は、低濃度でも強い毒性を示し、腎機能障害や生殖障害、神経障害などを起こす場合があります。

2月14日は「チョコレートの日」にも制定されています。バレンタインデーを前に、チョコレートの歴史や健康との関係を概観しましょう。

19世紀に「飲み物」から「食べ物」へ

チョコレートの原料であるカカオは、紀元前2000年ごろからメソアメリカ(現在のメキシコや中央アメリカ北西部)で栽培されていました。当時は、「飲むと元気が出る、神々の飲み物」として、カカオをすりつぶしたものに、とうもろこしの粉や香辛料を入れたものが珍重されていたと言います。

15世紀になると、この地にはアステカ帝国が築かれましたが、1521年にスペイン人のエルナン・コルテスに征服され、帝国は滅亡しました。コルテスはスペインにカカオを持ち帰り、国王カルロス1世に献上しました。

やがて、ヨーロッパに広がると、チョコレートは王侯貴族ら富裕層の嗜好品となりました。彼らはカカオの苦味を消す手段として、香辛料の代わりに砂糖を入れて飲むようになりました。

といっても、チョコレートはカカオバターを含むために濃厚で、飲みにくさがありました。18世紀後半に安価なコーヒーや紅茶も普及すると、チョコレートの生産や消費は衰退していきます。

救世主となったのは、「固形のチョコレート」の登場です。19世紀になるとチョコレートにはさまざまな技術革新が起こり、飲み物から食べ物に変化していきます。

1828年、オランダのココアメーカー「バンホーテン(VAN HOUTEN)」の創業者であるカスパルス・ファン・ハウテンが、カカオ豆からカカオバターを除去してココアパウダーを作る製法の特許を取ると、二代目のクーンラート・ヨハネスは、ココアにアルカリ処理をして苦味を抑え、液体をサラサラにして飲みやすくする方法を考案しました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

「影の船団」に偽造保険証書発行、ノルウェー金融当局

ワールド

焦点:対日「相互関税」24%、EU超えに政府困惑 

ワールド

OPECプラス8カ国、カザフの超過生産巡り協議へ 

ビジネス

米関税24%の衝撃、日本株一時1600円超安 市場
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story