コラム

翼竜にカラフルな羽毛の痕跡 恐竜との類似点、相違点から進化を考える

2022年05月03日(火)11時30分

1861年に始祖鳥の化石が発掘されて以来、「鳥類の祖先は恐竜」という仮説が提唱されるようになりました。研究が進むと、恐竜(詳細には獣脚類:二足歩行の肉食恐竜)から鳥類が進化したことはほぼ確実であるとされましたが、恐竜と鳥類とでは「指の番号が異なること」が謎として残っていました。

動物の指はもともと5本だったものが、進化の過程でさまざまに変化したと考えられています。そこで研究者らは本来の親指から小指までに1~5の番号をつけて、どの指が残っているのか、退化したのかなどを検討します。

恐竜と鳥類の前肢(翼)は指が3本です。恐竜は1~3指であることは定説でしたが、鳥類では1~3指説と2~4指説がありました。田村教授らは2011年、鳥類で2~4指に見えるのは観察時期や見かけ上の問題で、実際は恐竜と同じ1~3指であることを発生学の手法を用いた実験で示して、長年の議論に終止符を打ちました。

日本が恐竜研究で世界をリードする日

日本と恐竜の縁は他にもあります。実は日本では、2000年代に入って恐竜が続々と見つかっています。

1978年に岩手県で恐竜(既存種)の化石が見つかって以来、日本では多数の恐竜の化石が発掘されました。うち、ワキノサウルス(1992年、福岡県)、フクイラプトル(2000年、福井県)、フクイサウルス(2003年、福井県)、フクイティタン(2010年、福井県)、タンバティタニス(2014年、兵庫県)、コシサウルス(2015年、福井県)、フクイベナートル(2016年、福井県)、カムイサウルス(2019年、北海道)、ヤマトサウルス(2021年、兵庫県)の計9種は、学名が付けられました。

岐阜、福井、石川各県などに分布する手取層群は、中生代ジュラ紀中期~白亜紀前期(約1億数千万年前)にかけての地層で、福井県で発見された新種はすべてこの地層で発見されています。多くの種類の恐竜化石が発掘される層群として、世界的にも有名です。

さらに昨年、新種と分かったヤマトサウルスは、当時に中心的だった種と比べて2000万年ほど登場が古い種であることが分かりました。発見された淡路島は昔のままの種が残存できた地域で、ヤマトサウルスは進化種と共存できた「レフュジア」と考えられています。

日本は、地質や研究の面で、今後も世界をリードするような恐竜に関する新しい知見が得られそうです。今後もニュースが楽しみですね。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story