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翼竜にカラフルな羽毛の痕跡 恐竜との類似点、相違点から進化を考える
これまでに、恐竜では、1995年に中国・遼寧省で初めての「羽毛恐竜」が見つかりました。現生の鳥類のように、羽軸と羽枝を持つ羽毛の痕跡がある化石です。2018年には河北省の地層から、表面に「メラノソーム」という微細構造が密集した虹色に輝く羽毛の痕跡がある恐竜の化石が発見され「ツァイホン(彩虹)」と名付けられました。
翼竜の化石でも「毛のようなふわふわしたもの」が見つかった例はあります。ただ、枝分かれしていない糸状の構造だったため、研究者らは「ピクノファイバー」と名付けて、羽毛とは別の物として扱ってきました。
けれど、今回の研究チームは、ブラジル北東部で発掘された約1億1500万年前の翼竜「トゥパンダクティルス・インペラトール(Tupandactylus imperator)」の頭部の化石から、羽軸と羽枝を備える物体の痕跡を同定しました。
「恐竜が鳥の祖先である」と言い切れた理由
トゥパンダクティルス属は白亜紀の前期から存在し、巨大なトサカで知られている翼竜です。
新たに発見された化石には、頭頂部に生えるピクノファイバーだけでなく、鳥の羽毛のような中央を通る羽軸から分かれた羽枝を持つ構造が観察されました。
さらにこの翼竜の羽毛は、恐竜のツァイホンのようにカラフルだった可能性があります。今回の化石を電子顕微鏡で調べたところ、皮膚や毛の表面にメラノソームが見つかりました。具体的な色は不明ですが、場所ごとに大きさや形状が違うことから、多様な色が発現していたと推測できます。
共同研究者である英ブリストル大学の古生物学者マイケル・ベントン氏は、「頭頂部の目立つ部分に多様な色を備えていたことから、(現在の鳥類のように)仲間とのコミュニケーションや異性の注意を引くために使われていたと考えられます」と語ります。
研究チームによると、恐竜と翼竜の両方が羽毛を持つ理由は、両者の進化系統樹が分岐する前の共通祖先から受け継がれたためとも、別々に独自に進化したものが似たからとも考えられるといいます。たとえば現生でも、イルカ(哺乳類)とサメ(魚類)は類縁関係の遠い生物ですが似通った外見や器官を持ちます。生活環境や食物が似ていると、全く違う生物でも形態が似る場合があります。これを収斂(しゅうれん)進化と呼びます。
では、なぜ、翼竜の鳥に似た外見に惑わされずに「恐竜が鳥の祖先である」と言い切れたのでしょうか。日本人の発生学者、田村宏治教授(東北大)の研究グループも大きな貢献をしています。
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