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単位の新しい接頭辞が31年ぶりに追加 なぜ今なのか? 必要性は?
フランスで普及したメートル法は、1875年に「メートル法を国際的に確立し、維持するために、国際的な度量衡標準の維持供給機関として、国際度量衡局を設立し、維持することを取り決めた多国間条約」(メートル条約)が結ばれ、国際間で使われるようになりました。日本がこの条約に加盟したのは、10年後の1885年のことです。
当時の日本のメートル法の導入はどのような歩みだったのでしょうか。
日本では尺貫法が用いられていました。メートル法について初めて本格的に紹介したのは、1855年に郡上藩主青山幸哉の命で編纂された『西洋度量考』とされています。
1885年にメートル条約に加盟すると、1890年にメートル原器とキログラム原器が日本に届けられました。けれど、戦前は依然として尺貫法が優位でした。日本でメートル法が完全実施されたのは、1959年(土地・建物の坪表記は猶予が認められ、メートル法に移行したのは1966年)です。
「宇宙の果て」は約0.13ロナメートル
メートル法は1954年に、時間や化学量も含めた国際単位系に発展します。メートル条約に基づいて単位系の維持と見直しを行う国際度量衡総会(CGPM)で「長さ(メートル)、質量(キログラム)、時間(秒)、電流(アンペア)、熱力学温度(ケルビン)、光度(カンデラ)」の6つの基本単位が採択されると、1971年には物質量(モル)が7つ目の基本単位と認められます。
国際単位系の定義は2019年に抜本的に見直され、「『基底状態のセシウム133の超微細構造の周波数、真空中の光の速さ、プランク定数、電気素量、ボルツマン定数、アボガドロ定数、540×10の12乗Hzの単色光の発光効率』の7つの定義定数の数値を固定することによって、逆に国際単位系を定義する」と再定義されます。もっとも歴史的経緯や利便性から、現在も国際単位系は、旧定義の7つの基本単位と組立単位、SI接頭辞で表記される場合が多いです。
ここで組立単位とは、「平方メートル」のように基本単位を掛け算や割り算で組み合わせる単位です。SI接頭辞は、主に1000倍(10の3乗)、1000分の1(10のマイナス3乗)ごとに名付ける位取りを示す表現です。これまでは1991年に制定されたゼタ(10の21乗)、ゼプト(10のマイナス21乗)、ヨタ(10の24乗)、ヨクト(10のマイナス24乗)が最新でした。
巨大(あるいは微小)な数を表したい場合は、1のあとに(小数点のあとに)ゼロをたくさん付ければ表記できますが、非常に読みにくくなります。そこで、たとえば0.000000001グラムの代わりに1「ナノ」グラム(10のマイナス9乗グラム)と表記するのがSI接頭辞です。
今年は11月に第27回CGPMが行われます。3月に総会に諮られる内容の草案が公表されると、その中には新たな接頭辞――ロナ(10の27乗)、ロント(10のマイナス27乗)、クエタ(10の30乗)、クエクト(10のマイナス30乗)──も含まれていました。
接頭辞を増やして、プラスマイナス30乗の合計60桁に対して位取りを名付けると、どれくらい便利になるのでしょうか。長さ、時間、質量について検討してみましょう。
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