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NASA、中国、UAE... 2021年が「火星探査ブーム」なワケ
火星探査機の打ち上げには、最適なタイミングがある(写真はイメージです) Cobalt88-iStock
<今年2月から5月にかけて、米NASA、中国、UAEの探査機が立て続けに火星へと到達。各国のチャレンジは、なぜこれほど同時期に集中したのか?>
最近の天文関係のニュースで、火星の話題が目立つなと不思議に思っている人は多いかもしれません。
実は今年2月から5月にかけて、米NASAの着陸探査車「パーシビアランス(Perseverance)」と火星ヘリコプター「インジェニュイティ(Ingenuity)」、中国政府の着陸探査車「祝融(Zhurong)」、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター(MBRSC)による火星軌道を飛ぶ探査機「ホープ(HOPE)」の4種の探査装置が、次々に火星に到達したからなのです。
火星の探査は、火星周回軌道上から写真を撮ったり大気を調査したりする場合と、探査機を着陸させて表面の調査をする場合があります。
世界で初めて火星周回軌道に入った探査機は、1971年11月のマリナー9号で、着陸に成功したのは同年12月のソビエト連邦(当時)のマルス3号です。けれどマルス3号は着陸後、20秒で信号が途絶えました。2年後に打ち上げたマルス6号も、着陸が確認された途端に通信できなくなりました。本格的な探査機による火星表面の調査は、1976年7月にNASAのバイキング1号が着陸し、4年間にわたって活動したことから始まります。
NASAは現在、4つの探査機を使って火星表面近くで調査をしています。2012年8月に火星に着陸した探査車「キュリオシティ(Curiosity)」、2018年11月に着陸した"移動できない"探査機「インサイト(InSight)」、そして今年、火星に到達したパーシビアランスとインジェニュイティです。これまでにキュリオシティは火星の水の流れの痕跡を、インサイトは地震活動を発見しており、惑星学に新しい知見をもたらしています。
火星有人探査計画への収穫
パーシビアランスは、今年の2月19日(米東部時間)に火星に着地しました。今回のミッションは、生命の痕跡を探すことと、火星の有人探査や移住の可能性を探ることです。
パーシビアランスに搭載されていたインジェニュイティは4月19日に、火星で初めてのヘリ飛行に成功しました。インジェニュイティは、地球表面の大気圧の1%未満しかない火星の表面近くで、ローターを毎分2500回転で高速回転させて、離陸、上昇、ホバリング(空中停止)、降下、着陸と、ヘリコプター特有の動作をすべて達成しました。
翌20日には、パーシビアランスが火星大気の約95%を占める二酸化炭素を高温で加熱分解し、人工的に酸素を生成することに成功。将来的には、火星で生成した酸素と水素から水も作り出せる可能性があり、2030年代前半に予定されている火星有人探査計画に役立てられると考えられています。