- HOME
- コラム
- 湯川鶴章のテクノロジーフィクション
- 「シリコンバレーの太陽」とまで称された「ソフトバン…
「シリコンバレーの太陽」とまで称された「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に対する海外の評価を集めてみた
Altimeter Capital社のBrad Gerstner氏は「(ビジョンファンドの)2号ファンドを中止してもらいたい」と訴える。「ライバル社同士を戦わせるのは、それらの企業にとっても、シリコンバレーにとっても、ソフトバンクにとってもよくない」と主張する。孫氏は株主総会で、1つの事業領域、地域で1社だけに投資するのでバッテイングはないと語っていたが、Gerstner氏によるとビジョンファンドは事業領域の重なるDoorDash社とUber社の両方の企業に出資していると指摘している。
このほかにも「投資対象になるようなユニコーンと呼ばれるような大型ベンチャー企業があまり残っていない」「AIを対象としたファンドと言いながら、WeWorkのようなコワーキングスペースにも出資している」「投資先のUberやWeWorkの業績が芳しくない」などと言った批判的、懐疑的な意見は多い。
勝者総取りのAI時代だから
さてここからは私の個人的な見解を述べたい。私は、ビジョンファンドのように上場直前のユニコーンに投資する手法の方が、通常のベンチャー投資よりも有利なのではないかと思う。
1つは孫氏の言うようにシナジー効果が期待できるからだ。ビジョンファンドから投資を受けたベンチャー企業群が全体で大きなシナジー効果を発揮するまでには、まだしばらく時間がかかるだろうが、ソフトバンクがpaypayを実装するに当たってビジョンファンドの投資先の1つであるインドのキャッシュレスベンチャーのPaytmの技術支援を受けている。このような協業が今後も増えていくのだろうと思う。
もう1つの理由は、AIビジネスにはwinner takes all(勝者の独り勝ち)の傾向があると思うからだ。AIはデータがすべて。データが増えればAIはさらに賢くなり、サービスが向上する。サービスが向上すれば、ユーザーが増え、さらにデータが増える。さらにデータが増えれば、さらにAIが賢くなり、サービスが向上する。正のスパイラルに入るわけだ。検索や地図の事業で、先行するGoogleに後発企業がなかなか追いつけないのはこのためだ。
さらに1つの領域を支配するに至ったAIベンチャーは、関連するより多くのデータと成長機会を求めて周辺のビジネス領域に乗り出す。例えば東南アジアでタクシー配車アプリを提供するGrab社は、フードデリバリー事業に乗り出し、最近ではフィンテックの領域にも乗り出した。同社傘下の運転手の勤務データを持っているので、より手堅く運転手へ融資できるメリットがあるからだ。東南アジアの金融機関は、Grab社がフィンテックの領域に参入することを、数年前に予見できていただろうか。
AppleとOpenAIの提携は何を意味するのか 2024.06.13
AIは今後も急速に進化する? 進化が減速し始めた? 2024.06.05
AI自体を製品にするな=サム・アルトマン氏からスタートアップへのアドバイス 2024.05.29
汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏最新インタビュー 2024.05.27
マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無料公開するのか」 2024.05.14
AIエージェントの時代はどこまできているのか 2024.05.07
生成AIでネット広告はどう変わるのか 2024.04.25