コラム

シリコンバレーのリクルートAI研究所はチャットボットを開発していた

2016年11月07日(月)16時00分

 Halevy氏によると、リクルートにはいろいろなサービスがあり、サービスごとにいろいろなデータベースが存在する。リクルートのチャットボットに質問すると、いろいろなサービスのいろいろなデータベースから答えを探してきて、それを統合して答えてくれるようになるのだという。

 リクルートが、いろいろなデータを持っているということが、競争優位性につながりそうな話だ。

 しかしそうした利便性より重要なことがあるとHalevy氏は強調する。「チャットボットで何を実現したいのかということだ」。

「より多くのサービスを使ってもらうためのチャットボットを作りたいんじゃない。人々を幸せにするチャットボットを作りたい。サービスを使ってもらって売り上げを上げることが、ユーザーの幸福に必ずしも直結しているわけじゃないからだ」という。

 同氏によると、最新の幸福学で人々の幸福の要因は、先天的なものが50%、後天的なものが50%だということが分かってきたのだとか。生まれながらにして遺伝的に楽観的で前向きな性格な人がいる。お金持ちの子供として生まれる人もいるし、戦禍の耐えない地域に生まれる人もいる。そうした先天的な要因はどうしようもないが、後天的な要因で人々がより幸福になることを支援できるはずだと言う。

 その後天的な要因50%のうち、物質的な要因は10%、精神的な要因が40%なのだとか。「お金や仕事、娯楽など、多くの人が大事だと思って労力を費やしていることは、どれだけがんばっても実は幸福感の10%ぐらいにしか寄与しない。残りの40%の幸福は、長期的な人間関係や、マインドフルネス(瞑想)、自然とのふれないなどだが、ここに注力すれば人々はより幸福になれる。われわれは特にこの40%の幸福の部分の最大化に貢献したいと思っているんです」。

「記憶、計画などはAIが得意な領域。人間はそうしたことをAIに任せて、今、ここにある目の前のことに集中すればいい。それがAIと人間の住み分けになる。AIは人間の幸福の最大化を支援してくれるようになるんです」。

 ユーザーを幸せにしてくれるアドバイザーとしてのチャットボット。プロジェクト名は「ジョイ(喜び)ボット」だという。

 音楽を再生してくれるボット。タクシーを呼んでくれるボット。予定をリマインドしてくれるボット。出張の飛行機や宿を手配してくれるボット。暇なときに雑談の相手をしてくれるボット。

 いろいろなボットがこれから登場してくるだろうが、幸福の最大化を支援してくれるボットが登場すれば確かに人気が出るかもしれない。

 どこまで完成度の高いチャットボットを出してくるのか。楽しみに待っていたいと思う。

<シリコンバレー出張スペシャル>
第1回はこちら 次のAIフロンティアは自然言語処理?


2歩先の未来を創る少人数制勉強会TheWave湯川塾主宰
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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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