コラム

時価総額45億ドルのMagic Leapが拓くミックス・リアリティの世界 スマホは不要になるのか?

2016年04月25日(月)15時06分

 Magic Leap向けにコンテンツを開発中の映画スタジオWeta WorkshopのPeter Jackson氏はWired誌の取材に対し、「ミックス・リアリティは3D映画の延長にあるものではない。まったく別ものだ。どこにでも物体のイメージを出現させることができるようになれば、まったく新しい娯楽の誕生になる」と語っている。果たして、映画を超える娯楽に成長するのだろうか。

 可能性は映画だけではない。「Magic Leapメガネをつけてエンパイアステートビルを見上げれば、1930年代に同ビルが建設されているもようを早送りで見ることができる。シカゴの町並みを眺めていれば、ギャングの車がやってきて撃ち合うのが見れるようになるかもしれない。ミックス・リアリティは教育、娯楽、観光の新しい形になる。10年以内にミックス・リアリティ・メガネはスマートフォンよりも普及するんじゃないかと思う」と同氏は語っている。

【参考記事】オキュラスリフトで未来をのぞく

 Wired誌の著名ジャーナリストKevin Kelly氏は、「20年以内にヴァーチャル・リアリティか現実か分からないくらいにディスプレイ技術は進化するだろう」と語っている。

 現実と仮想現実の違いが分からないくらい、2つが融合した世界。それはいったいどんな世界になっているのだろうか。

本当にくるのか。いつくるのか。

 現実と仮想現実が融合した世界が、いずれくる。そうした議論はこれまで何度も繰り返されてきた。インターネットが普及し始めた1990年代の半ばにも同様の議論を聞いたことがあるし、数年前に仮想空間セカンドライフがブームになったときにも同様の議論を耳にした。

 恐らくいずれそうした時代になるのかもしれないが、果たしてMagic Leapがその時代の幕を切って落とすのだろうか。Magic Leapは新しい時代の社会インフラとして、膨大な影響力を手にするのだろうか。

 少なくともシリコンバレーのベンチャーキャピタリストは、そう考えている。そう考えているからこそ、2500億円という巨額の投資を同社につぎ込んだのだろう。

 Magic Leapに出資したベンチャーキャピタルAndreessen HorowitzのChris Dixon氏は「高性能ヴァーチャル・リアリティを一度でも体験した人は、必ず欲しくなると思う。2020年はバーチャル・リアリティ時代になるだろう」と語っている。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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