旧植民地の心の傷に思いを馳せない日本の出版社
中国に「売り渡した」道義的・法的責任
第2に、戦前に満蒙の大地に侵入し、満蒙独立という甘い言葉を満洲人やモンゴル人の耳元で囁いていた日本人は、戦後に多くが北京詣でして毛沢東の中国共産党に謝罪した。満洲とモンゴルは長城の北にあり、文明的にも歴史的にも中国の一部ではなかった。1912年早春に清朝の皇帝が権力を孫文に禅譲する前年の暮れに、モンゴル人は既に独立を宣言している。その独立したモンゴルはチベットと外交関係を結んでいたし、世界からも承認されていた。
モンゴルの半分、即ち内(南)モンゴルは日本に支配されなかったら、1945年以降に中国に取られることもなかった。このように、台湾も南モンゴルも日本が占領し、しばらく統治してから中国に「売り渡した」に過ぎない。その道義的・法的責任について、日本は一度も反省しなかったのではないか。
「アジア人物史」の総監修者は在日韓国系知識人の代表格の姜尚中・元東京大学教授である。姜氏は在日としての精神的葛藤について語り続けて来たのに、同じ境遇に置かれていた台湾人と満蒙の人間の心情を汲み取ろうとしなかったのではないか。李登輝氏とダライ・ラマ法王を「中国人」とするのは、在日を日本人だと決め込むのと同じではないか。
「各人物を配置した地域区分はあくまで便宜的なものです」と、集英社のウェブサイトに記されてはいる。集英社は漫画やアニメなどを中国で売って儲けているのだろうが、中国での経済的利潤ばかり考えるのでなく、旧植民地出身者の癒えない傷に思いを馳せてはどうか。
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