運営停止に追い込まれた香港民主派メディアが筆者に語ったこと
立場新聞の関係者が逮捕された直接の容疑は、「政府に対する憎悪を扇動する記事を掲載した」ことになっている。このことは筆者にとっても無関係ではない。
実は雨傘運動に対する弾圧の後に、同社の執筆陣は香港の歴史と運命を中国周辺の諸民族のそれらと関連付けて比較研究しようと試行錯誤していた。そこで複数の有力な編集者がモンゴルの近現代史を専門とする筆者と会い、中国共産党の自治政策について意見交換した。
その際、筆者は次の趣旨の発言をした。「中国共産党は最初、誰よりも甘い約束の言葉をささやきながら接近してくる。内モンゴルの場合は『モンゴル人の独立を支援する。少なくとも高度の自治を約束する』と標榜していた。そのスローガンを信じたモンゴル人が独立を放棄して中国領内にとどまる選択をすると、高度の自治ではなく、文化的自治のみが与えられた。そして中国は抑圧を緩めず、文化大革命中は内モンゴルで34万人を逮捕し、12万人を負傷させ、2万7900人を殺害した」。
その上で筆者は彼らに、香港は確実に内モンゴル人が歩んできた道をたどるだろう、そうでなければ、やはり漢族は漢族に優しく、漢人の香港には高度の自治が許されるのに対して、われわれ異民族はジェノサイド(集団虐殺)の対象にされるだけだと指摘した。
それに対して立場新聞の編集者、「われわれは漢民族ではなく香港民族だ」と語ったものだ。その彼は日本で暮らし日本の大学で教鞭を執っているが、12月末に香港警察から指名手配された。
日本が「香港民族」を守れるか否かもまた問われている。年が明けた1月4日には香港最後の民主派メディア「衆新聞」も運営を停止した。日本だけでなく、世界の民主主義陣営が中国の挑戦を受ける前兆であろう。
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