運営停止に追い込まれた香港民主派メディアが筆者に語ったこと
逮捕された立場新聞の林紹桐・代理編集長(中央) TYRONE SIUーREUTERS
<中国共産党の自治政策を話し合った時に飛び出した「香港民族」の矜持>
2021年暮れの12月29日早朝、香港政府は200人もの警察を動員し、ネットメディア「立場新聞」の関係者7人を緊急逮捕した。
香港で民主派の主要なメディアが壊滅状態に追い込まれたことが、世界に少なからぬ衝撃を広げた。逮捕されたのは立場新聞前編集長の鍾沛権と、その妻で蘋果日報(アップル・デイリー)元副編集長の陳沛敏、代理編集長の林紹桐、それに21年6月まで立場新聞の理事を務めていた歌手でポップスターのデニス・ホーらだ。
警察は同社を捜索して取材資料を押収し、総計6100万香港ドルに上る資産を凍結した。立場新聞は14年に弾圧された香港の民主化運動「雨傘運動」の直後に創刊された。
元理事のホーはそれまで雨傘運動に全身全霊で身を投じ、推進役を務めた。カナダで教育を受け、同国民でもあるホーは民主化運動が弾圧された後の香港に危機感を抱き、19年7月には国連人権理事会で、9月には米議会で証言。中国を世界の民主主義陣営の敵だと批判した。
香港を守り、中国を国連人権委員会から追放するよう英語で発信し続けた。また、ホーは台湾を訪問し、香港で約束されていた一国二制度が有名無実化した実態を伝えていた。
台湾統一を「偉大な中華民族の復興」の目標の1つとする習近平(シー・チンピン)政権からすれば、危険人物の代表格だった。
ホーだけでなく、反中メディアとして既につぶされた蘋果日報の陳が立場新聞と連携しながら発言し続けてきたことも中国は許せなかっただろう。立場新聞は19年の反政府デモ行進の様子をオンライン生中継で世界に伝え、地下鉄駅で発生したデモ隊に対する無差別攻撃「白色テロ」の真相を究明しようと追跡し続けていたからだ。
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