トルコ大統領の怒りの裏にある、知られざるトルコとNZの歴史問題
その点で、テロ犯タラントが73ページにも及ぶ声明文の中で、中国の全体主義思想を称賛していたことは注目に値する。エルドアンは2月に、「ウイグル人弾圧は人類の恥」と中国によるイスラム敵視政策に注意を促したばかり。事実、タラントは中国共産党政権によるウイグル人弾圧の報道を知り、「多様性なき国家」中国に共鳴するに至ったと指摘されている。
ニュージーランドのテロを受けて、中国共産党系のプロパガンダ紙「環球時報」幹部はネット上で、「過激派のテロ行為を事前に抑え込んでいる」と、改めて新疆ウイグル自治区での強制収容を正当化している。
ニュージーランドのテロ事件は私たちに2つのメッセージを示唆している。第1に、イスラム世界に対する差別と偏見の根は深いことだ。それはともすれば、西洋諸国を「正義」と見なす連合国的な歴史観とも連動している。
第2に、暴力に正当性が与えられている背景には、中国の存在が無視できないという点だ。中国の少数民族弾圧という暴力は国内にとどまらない。今回タラントが声明で称賛したように、中国の手法は各国の独裁者たちに加え、確実に個々のテロリストにも「輸入」されるようになってきたのだ。
<本誌2019年04月09日号掲載>
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