コラム

「働き方改革」のウラで進む「時短ハラスメント(ジタハラ)」の実態

2018年06月05日(火)14時00分

時間の制約を受けずに働くほうがいいこともある z_wei-iStock.

<現場を知らない管理者が押し付ける時短は能力も成果も潰すハラスメントになる>

安倍政権が今国会の最重要法案と位置づける「働き方改革法案」が5月31日、ついに衆議院本会議で可決しました。

「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の問題で野党は徹底抗戦を仕掛けましたが、別の場所でも複雑な思いでこの法案可決を見つめていた方々がいるはずです。仕事好きで、達成意欲が高い人たちがその最たるものでしょう。

長時間労働を是正することは、もはやすべての日本企業に課せられた責務。しかし、現場感覚のない人が上から目線で時短を強要すると、結果を出したい、目標を達成したいという意欲の高いマジメな人を苦しめることになります。これが一種のパワハラ......「時短ハラスメント(ジタハラ)」を引き起こします。

この「時短ハラスメント(ジタハラ)」という言葉は、私が2016年12月の記事に使ったことがきっかけで週刊誌などにも取り上げられ、さまざまなニュースでも取り上げられるようになりました。なぜ、ここまで「ジタハラ」という言葉が使われるようになったのか?

今回は「働き方改革」を進める裏で、苦しんでいる人がいることもまた知ってもらいたいと思います。

職種によって「成果」は異なる

働き方改革の一環として、政府は「時間」単位ではなく「成果」単位で人を評価する新たな基準づくりを推し進めようとしています。しかし、現場サイドからすれば「成果」といっても、何を成果に設定したらいいかわかりづらい職場もあります。

製造部、管理部や情報システム部などは、どちらかというと「減点主義」の職種です。トラブルが起こらないように(減点されないように)、現状を維持させることに力を入れます。「成果」と言われても、あたりまえのことをあたりまえにやり続けるしかないのが普通。会社へのアピール材料が乏しい職種です。「今期の目標は?」と言われても、「淡々と日々の業務をこなします」としか言いようがないことがよくあります。

いっぽうで営業や商品開発などは「加点主義」の職種です。成果を出そうと思えば果敢にチャレンジできます。「今期の目標は?」と上司から聞かれたら「新規のお客様を10社開拓します」とか「利益率の高い商品を最低3つは開発します」などと言えます。会社にアピールする材料を豊富に持っているといえるでしょう。

製造部、管理部、システム部などは、想定外のトラブルが起こらない限りはルーティンワークが続きます。自主的にできることといったら積極的に「改善提案」をすることぐらいです。したがって、業務手順の見直し、マニュアル化などによって労働時間を圧縮することは意外に容易でしょう。夜の9時や10時までの残業が常態化している部署があれば、すぐにメスを入れたほうが良い。

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日製副会長、4月1日に米商務長官と面会=報道

ワールド

米国務長官、4月2─4日にブリュッセル訪問 NAT

ワールド

トランプ氏「フーシ派攻撃継続」、航行の脅威でなくな

ワールド

日中韓、米関税への共同対応で合意 中国国営メディア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story