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フランスの「極右」が「極右」と呼ばれなくなる日
「極右」国民連合のジョルダン・バルデラ党首 Baptiste Autissier / Reuters
<フランスの総選挙における「極右」国民連合の大躍進の背景には、国民連合がもはや「極右」とはみなされなくなってきたフランス国民意識の変化がある>
7月7日に行われるフランス総選挙の決選投票では、「極右」国民連合が第1党となることが確実視されるが、もし単独で過半数(絶対多数)の議席まで獲得するようなことになれば、マクロン大統領はその国民連合のバルデラ党首を首相に任命せざるを得なくなり、まったく政策や主義主張が異なり、政治的に鋭く対立する大統領と首相の野合政権が誕生することとなる。
「極右」に対する国民意識の変化
ここまで「極右」とされる国民連合が党勢を拡大してきたことの背景には、国民連合を必ずしも「極右」とはみなさなくなってきたフランス国民意識の変化がある。
それは特に右派支持層の中に顕著に見られる。
左派支持層と中道支持層の中では、依然として「極右」に対する拒否感・警戒感は根強いが、右派支持層の間では、「極右」に対する警戒感が薄れ、国民連合はかつての「極右」のように危険な政党ではないという考え方がじわじわと浸透してきたのだ。
ここで言う「極右」は、フランス語のextrême droiteの直訳だ。
ルモンド紙など左派系のメディアでは、extrême droiteを国民連合の代名詞として使っているし、マクロン大統領も常に国民連合をextrême droite呼ばわりしている。
一方、フィガロ紙など右派系メディアでは、いつの間にか、国民連合をextrême droiteと形容することはなくなっている。
こうした状況を受けて日本のメディアでも、依然として「極右」を使い続けているところもあれば、「極右の流れを汲む右派政党」とか「右翼」とか、「極右」に代る言葉を使い出したところもある。
「脱悪魔化」の成功
こうして、一部とは云え、「極右」というレッテルが剥がれ始めたことは、まさにマリーヌ・ルペン元党首が進めてきた、党の「脱悪魔化」戦略の成功によるものに他ならない。
「脱悪魔化」とは、父親のジャンマリ・ルペン党首時代の「国民戦線」が喧伝していた極右的な主義主張(過激なナショナリズム、排外主義、反ユダヤ主義、復古主義、反共和主義など)を封印し、超保守的な基本姿勢は保ちつつ穏健化した政策(フランス第一主義、反グローバリズム、反EU、移民規制の強化、治安対策の強化、反エリートなど)を前面に出すことで、極右性を払拭し、右派の中の「普通の政党」となることを目指したものだ。
2011年に2代目党首に就任した娘のマリーヌ・ルペンは、この「脱悪魔化」路線の下、生活苦や治安の悪化に悩む庶民の味方、フランス人の権利を第一に考える愛国者、それでいてリベラルで個人主義的な家族政策や女性の権利拡大にも熱心なフェミニスト、というソフトなイメージを、国民の中に植え付けることに成功した。このイメージ・チェンジは、2018年に党名を今の「国民連合」に変えたことで、さらに確かなものになった。
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