最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
米オレゴン州司法省次官が語る『大統領選挙、フェイクニュース、そしてバイアス犯罪』の最新動向
新型コロナ5類後初めてとなる、ゴールデンウィーク真っただ中の日本。
とはいえ、この物価高や円安の影響で、旅行を見合わせる人も少なくありません。
今年のゴールデンウィークも家でのんびり・・と思いメディアを見ると。
政治家や芸能人によるパワハラ、子供から大人まで広がるいじめ。また、『もしトラ』という言葉と米国大統領選フェイクニュースの氾濫。
そのような状況を目にしながら、こういう問題に対処する行政機関は一体どこ?と考えると・・・
「あっ、司法省だ!」
ということで、今回は、初めて日本のメディアに登場する『オレゴン州司法省のスタッズ・ウォーター次官(以下、『次官』)』。特別に友情出演ならぬ、友情インタビューに応じてくださいました。
『同性パートナーと長年幸せに暮らしている、50歳を超えた黒人女性。』
「このプロフィールを掲載してほしい」というリクエストと共に、今まであまり語られる機会がなかった司法省の役割・業務。そして、私たちの社会生活との繋がりをお聞きしました。
この文章は、アメリカやオレゴン州の一端を紐解くものです。でも読み進めていくうちに、あなたの地域や職場・組織に関連する重要なヒントが見つかるかもしれません。
まずは、今一番の話題。11月に行われる米国大統領選挙の話からスタートです。
大統領選挙シーズンの騒乱、司法省の懸念とは?
「本選挙が行われる8カ月間に、なにが起こるかは分からない!」
世界の方向性を左右する米国大統領選挙戦。現在の激しいせめぎ合いが継続すると予想されています。
すでに、2020年の選挙時同様、オンライン上の誤情報やフェイクニュースの氾濫。これにより、私たちの社会生活での悪影響も拡大傾向に。
その結果、社会の分断や憎悪表現の拡散が進み、市民生活や社会の公正・公平性への取り組みに新たな課題が生じています。
司法省として、今年最大の問題になるのは大統領選!そう言い切る次官。
「現行法では、党派的なニュースメディアが偽情報を報道しても責任を問われません。このことは社会にとって、すでに大きな問題となっています。
ビジネス化された広告収入によるニュースサイトの拡大。ジャーナリスト倫理を欠く、あるいは極端な思考・思想を持つ 『にわか』 ライターの増加。
2024年の選挙結果をアメリカ人がどう受け入れるか。この問題は米国だけにとどまらず、世界全体に莫大な影響を与えることが明らかです。」
こうきっぱりと言い切る次官。そのモットーは『柔軟性を保つこと』。
日々起こる、新たな課題に迅速に対処するため。さらには、柔軟な心は成長志向を育み、継続的な学びを意味すると静かに説きます。
では、その考え方の根底には何があるのでしょうか。
正義、公正、こころの声
法的処置に追われる業務、と聞くと堅苦しいイメージが湧くかもしれません。
でも、実際は、社会に奉仕する情熱を持つ方。その姿は、まるで暖かいパンのように、柔らかく安心感を与えてくれます。
先ずは、キャリアの始まりについて尋ねると率直な答えが返ってきました。
「幼い頃、「正義」とは何かについて考え始め、法への興味が芽生えたように思います。
アメリカの子どもたちは『フェアじゃないよね~』と感じたときに、じゃあ、何が正義なの?と考えます。裕福とは言えない大家族で育った私も、そんな子供の一人でした。
自分の意見をきちんと口に出して伝える大切さ。そのような習慣は、自分の人権を守るためや公正な手続きを確保するために重要な土台となる。そう学び成長してきたのです。」
その後、大学院法科を経て、現職のオレゴン州司法省の検事総長室での業務を開始。市民権保護の指導的な立場から司法次官に至るまで、様々な役割を果たしながらステップアップ。
そして今でも、常に心を砕いていること。それは、社会的に弱い立場にある市民へのサポートだと言います。
では、次官が働く州司法省とは、市民のためにどのような働きをしているのでしょうか。
次ページ 人種ヘイト、加害者の心理って? 最新ワード『バイアス犯罪』とは? オレゴンは安全になったの?
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)