最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
「モノも心の中も、セレクト」ポートランドの流れを生きる
| コロナ禍と小売業の試練、そして心をつくす
「コロナ禍でビジネスを運営すること。これは、今までの人生の中で経験もしたことがなかったほど最も困難なことでした。このポートランドでも、多くの小売り店が閉店に追い込まれたことは同じ経営者として胸が痛みます。
私たちの会社も、一時的にすべての路面店を閉鎖。当時55人いた従業員を9人まで減らしました。彼らには、復帰を約束した形での一時解雇を提示をしました。こうすれば、彼らは正式に政府からの失業給付金が受け取れますので。
去年からつい最近まで、残りの社員と一緒にウェブサイトの見直しと運営。路面店再開をより効率的するため、新しい戦略を立てるということに時間に費やしてきました。もちろん、このような不安と不確実性の中で事業の新しい計画を立てることは、運営面、財務面で困難でしたし精神的にも非常に大きな負担となりました。
でも、想像力と創造性、そして回復力を蓄えながら前進するしか選択肢は無かったのです。とにかくすべての業務を評価し直して、効率化を図る仕事から取り掛かりました。またその時期に、政府からの緊急援助資金を得られたことも大きな助けの一つとなりました。
ピンチを有益に変えるという考えの元、実は、先月新しい店舗を一つオープンさせました!不安におののきながらも、未来を信じることで困難を乗り越えるすべを学び、今も学びつつあります。」
さらにこのコロナの影響から、『持続可能性のコンセプト』をより一層前に出していく。これが、米国の小売業界の流れの主軸になっていくことも説明してくれました。
「実際、私たちのベンダーの多くは、今まで以上に持続可能性を重視していく方向に進んでいるのです。ほぼすべての商品に関して、オーガニックで持続可能な原材料を使用しているところを優先的に選んだりする傾向が強くなっています。また、リサイクル素材やアップサイクル素材を使って、製品を作っているブランド自体も倍増しています。」
コロナ禍中・後となる今からの時代。持続可能性、エコを抜きにして小売業の発展は無いと言い切っても過言ではないと断言をするブリアンさん。それは、その様な商品やプロダクツを顧客が求めているという意味においても同様だと教えてくれました。
| 親として、人としての学び
ビジネスの話になると、つい熱くなってしまうというブリアンとジェレッドさん。現在、3才と9才になるお子さんの話になれば、それは初夏のような空気へと変わります。
去年はほぼ一年間、学校や保育園に通えなかった二人の子供。数か月前からやっと、時間差登校とクラス人数制限下での通学型授業も開始されました。
ビジネスを立ち上げ、運営に必死な日々の中での子育て。夫婦一緒に子供を育てていくことは喜びだとほほ笑みます。
とは言え多忙な暮らし、毎日があっという間に過ぎていきます。そんな中、去年から今年にかけて家族と一緒に過ごす時間が必然的に増えました。ある日ふと、子供がものすごく成長していることにハッと気が付きます。
「ビジネスへの深い思いとそれにかけていた長い時間。でもそれよりも、もっと愛情で多くの時間を子供達に掛けていたか。それを考える良いきっかけになりました。混乱した困難な日々において、子供達は『単純なよろこび、そしてシンプルであることの大切さ』を私たち夫婦に教えてくれたのです。」
それを機に、結婚した当初よく話していた自分達のモットーを思い出したと言います。それは、『心を込めて、日々を生きる』ということ。
「人々が皆、自分の夢と希望を追い求め、他の人が成功するのを助けることができる。地域社会を楽しく、平等的で人間として生活がしやすい場所にしていく。そんな思いを抱きながら、暮らしていきたいと再度思ったのです。」
まだまだ、世界的に苦しいこの時期。世の中の多くの人が、苦難から自分の人生を見つめ直し、自分自身のために勇気を持って変化を起こす姿。それを見て、多くを学んだと言います。
実の所、ブリアンは「長年、自己肯定ができずに苦しみ悩んできた。」と言います。でもこのコロナ禍の2年間で、コントロールできないことよりもコントロールできることに集中することを学ばざる得なかった。そして、このことで殻を破ることができ、自己成長につながったと静かに語ってくれました
「今では自分に対して、大分自信が持てるようになりました。そして日々の困難に直面しても、簡単には動じなくなりました。困難なことを乗り越えたときには、将来的にも同じことができるという自信につながります。去年から今年にかけては、本当に辛い時期でした。でも、それを自己学習しながら乗り越え成長できたことがうれしいのです。」
私たちが、意識をして共助をしていく。そうすれば、家族を含めたこの地域社会はもっと活気に満ち、創造的で思いやりがあり、その絆を深めることができるんだと信じています。そうブリアンさんは、締めくくってくれました。
仕事を作り出す。家族をささえる。自分を労わる。そんな、日常をささえるあたたかさ。あなたなら、どのような形でその小さな思いやりを表しますか。
「本、コト、ときおりコンフォートフード」
ブリアン|she/her|Tender Loving Empire代表
生きる楽しみ、退屈のない人生
私のオリジナルの人生感。それは、楽観主義者やオープンマインドの人と意識して共に時間を過ごすことです。その方が、人生はより楽しい方向に進んでいくと信じています。あまりお金を掛けなくても、クリエイティブに心豊かになるような時間を過ごすように。コロナ後という新しい季節を迎えるにあたって、より平和でより楽しい日々になるようにと、日々こころを整えて過ごしています。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)