オーストラリアの診察室から
オミクロン株の中で始まった新学期
オーストラリアの学校は通常1月末が新学期です。今年は年末年始から始まったオミクロン株感染拡大のため、各州がさまざまな対策を立てました。ニューサウスウェールズ州やビクトリア州は例年と同じタイミングで新学期が始まりました。クイーンズランド州は2週間遅れての開始となりました。
迅速抗原検査
ニューサウス州とビクトリア州などでは学校教員や生徒が週2回迅速抗原検査を受ける方針にしました。
クイーンズランド州は他の2州ほど厳しくなく、迅速抗原検査は症状がある場合のみ受ける方針にしました。これらの方針については医療関係者、学校関係者の間でもさまざまな意見がでています。迅速抗原検査は週2回検査をすることで、無症状の感染者を見つけるのが目的です。しかし親が子供にやるため、実際にきちんと行われたかは自己申告になります。また迅速抗原検査はPCRほど正確でないため、あまり意味がないという考えの人もいるようです。
またオミクロン株は無症状の人が結構いるようで、子供はまったく無症状で元気だが、ルールにしたがい検査したところ陽性だったという話も聞きます。ゴールドコーストでクイーンズランド政府がランダムに無症状の人に行った検査でも予想以上の陽性者がいました。
クイーンズランド州のやり方では無症状の人は発見できませんが、迅速抗原検査の不確定性や無症状の人が多くいることを考えると、週2回の検査はそこまで有効ではないという意見もあります。
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マスク
学校では教員や中学生以上はマスクの着用が義務化されています。小学校の方針は州によって多少違います。クイーンズランド州では小学生3年生以上はできるだけマスクを着用してくださいという方針です。他の州では3年生以上はマスクを絶対にしてくださいという方針のところもあります。マスクについても小さな子供がマスクをするのなんて無理という親が多いようです。その一方で、自分の子供はぜんそくや他の疾患があるため、他の子供がマスクをつけてくれないと心配という意見もあるようです。
ワクチン接種
ほとんどの州で学校の教員やスタッフには2回の新型コロナウイルスワクチン接種が義務化されています。オーストラリアでは1月から5歳から11歳までの新型コロナウイルスのワクチン接種も始まりました。現在のところ18歳以下のワクチン接種は推奨されていますが、義務化はされていません。クイーンズランド州は学校開始を2週間遅らせることで、より多くの子供がワクチンを打てるようにと考えていたようですが、ワクチンの接種率はそこまで伸びていません。理由は様々なようです。まだ5歳から11歳の接種はそこまでデータがないと心配する親や、多くの子供は軽症の場合が多いなど理由があるようです。またすでに感染してしまったので、接種を遅らせる場合もあるようです。
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学校が始まることによってコロナの件数がまた増えるのではないかと心配されていましたが、今のところオーストラリアの件数は下がってきています。このまま件数が減っていくのを願うばかりです。
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
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