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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

クイーンズランド州の感染者の急増

画像:golibtolibov-iStock

12月中旬からクイーンズランド州の州境が開くことは計画されていました。そのためワクチンを早くうたなければ、感染に晒される恐れがあると懸念されていました。そして州境が開いた現在、予想をはるかに超える勢いで感染者数が増えています。

シドニーやメルボルンからの飛行機での感染も多く確認されました。コンタクトトレーシングのリストも日増しに長くなり、あまりの数に機能しなくなったのでトレースを大幅に縮小しました。クリスマスで人の移動や集まりがとても活発になり、より一層市中感染を広めています。12月31日には確認されているだけでも1日3000件以上の市中感染がありました。もはやどこにいても感染のリスクがあります。

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https://www.qld.gov.au/health/conditions/health-alerts/coronavirus-covid-19/current-status/statistics (2021年12月31日)

クイーンズランド州のチーフメディカルオフィサーは現在のパンデミックをエンデミックにする必要があり、ウイルスがもっと広がる必要があると言っています。エンデミックとは風土病のように特定地域で継続的に発生する状態のことです。みんなが免疫を持つ必要があり、その方法は二つ、ワクチンを接種するか感染するかのどちらかで、みんなが免疫を持ち、ウイルスが広がればエンデミックなるとの意見です。

ウイルスが広まる方がいいと発表している一方で、クイーンズランド州政府は室内ではマスクを着け、ソーシャルディスタンスをして、新型コロナウイルスの症状がある人はテストするように呼び掛けています。これらの発言は矛盾しているようですが、病院が新型コロナウイルス患者によって満床にならないようにある程度件数をコントロールする必要があるからです。

クイーンズランド州では以前はほとんどの新型コロナウイルス陽性者は病院で経過観察、治療を受けていました。しかし感染者数が爆発的に増えていること、また今のところオミクロン株の症状が以前の新型コロナウイルスと比べると軽症であることから、自宅での経過観察、治療に移行しています。軽症患者の自宅での経過観察は病院では数が多すぎてできないため、地域のGP(総合診療医)で行う計画が予定されています。これはテレヘルスによる電話またはビデオ受診になります。オミクロン株による症状が軽症とは言え、感染した場合はまだ隔離の必要があります。そのためクリニック内には風邪など新型コロナウイルス感染と似た症状のある人は一切入れません。

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画像:MCCAIG-iStock

感染を広げ、パンデミックからエンデミックにするというのはこの新型コロナウイルス問題を解決する一つの方法とされているようですが、専門家の間でも意見は分かれています。今のところオミクロン株は軽症の症状しか起こさないようですし、クイーンズランド州でも16歳以上の人の85%が2回の新型コロナウイルスの予防接種を終えています。しかしオミクロン株には3回目のブースターショットが必要という研究結果がでてきています。オーストラリア政府は2回目から6か月後のブースターを推奨していましが、それがオミクロン株の増加とともに5か月に短縮され、先日の発表では4か月となりました。1月末からは3か月に変更になるようです。オーストラリア政府はブースターを受けられる人はできるだけ早く接種するように勧めています。しかし多くのGPクリニックなどはクリスマス中は閉まっており、また急なガイドラインの変更のため、多くのクリニックが はワクチンの在庫を持っていません。

16歳以上では大部分の人が最低でも2回のワクチン接種を終えていますが、11歳以下の予防接種はまだ始まっていません。来年の1月から始まる予定ですが、どんなにはやくても2回目の接種が終わる前に新学期が始まります。今のところ子供はほとんど軽症または無症状といわれていますが、感染者が急増する中、新年からどうなるのか不安要素がたくさんあります。




参考
https://www.abc.net.au/news/2021-12-24/qld-coronavirus-covid19-omicron-from-pandemic-to-endemic/100722924
https://www.brisbanetimes.com.au/national/queensland/queensland-contact-tracers-to-wind-back-tracking-every-case-20211221-p59j96.html
https://www.qld.gov.au/health/conditions/health-alerts/coronavirus-covid-19/current-status/statistics

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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