オーストラリアの診察室から
帰国子女のままいつのまにか永住
父親の仕事の関係で一歳のときにスイスに行き、その後、日本・シンガポール・アメリカで育ち、現在はオーストラリアに永住しています。もともとは父親の仕事の都合による海外生活でしたが、両親が日本に帰国したあとも私は海外に残りました。私と同じく親の赴任により海外で育った友人たちの多くは大学受験や就職を機に日本に帰国しました。私もいずれは日本に帰国して就職するのだろうとふんわり思っていましたが、現在はオーストラリアで医師になり、家族を持ち海外生活を送っています。
最初は永住する予定はなく渡豪しましたが、いつのまにか15年が経ち、気がつけば私の人生で一番長く住んでいる国となりました。その間、幾度か帰国の機会はありましたし、オーストラリアの医学部を出たあとはまたアメリカに行くという選択肢もありました。その他にもシンガポールやイギリスという選択肢がないわけではありませんでした。もちろん日本に帰国するという選択肢も。
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ありがたいことに幾つかの選択肢がある中で、今でもオーストラリアにいる理由はいろいろあります。オーストラリアは世界的にみても治安が良く、銃は日本と同じで基本的に違法です。娯楽やサービスに関していえば、日本のサービスのようなお客様第一ではなく、どちらかというと働く人のほうが大切にされます。平日はお店も5時ぐらいには閉まります。不便に思うときもありますが、ライフワークバランスを考慮した場合、私はオーストラリアのやり方を気に入っています。例えば5時にお店が閉まる場合、4時50分ぐらいにはシャッターが閉まり始めています。5時に閉まるということはお店のドアが5時にしまって従業員が帰るということです。そのため、閉店前に買い物にいくとよく掃除機をかけているのを見かけます。閉店と同時に帰るので営業中に掃除するのです。これは最初戸惑いましたが、長く住んでいると慣れました。そして働く側としては楽です。また、フルタイムで働いてる場合、年間4週間から6週間の有給があります。また有給とは別に5日の病気の時のための休みがあります。職種によりますが、ほとんどの場合残業はありませんし、基本的に明日できることは明日やるというスタンスです。オーストラリアでは家族の時間、休暇をとても大事にしています。私の場合、幸運なことに家族もオーストラリアの生活を気にいっているというも重要な理由です。永住を考えているけど家族やパートナーの方がそこまで乗り気ではないという方もいます。
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日本、アメリカ、シンガポール、オーストラリアと住んできて、(スイスは幼かったのであまり記憶にありません)よくどの国が一番いいですかと聞かれることがありますが、これは比べるのが難しいです。住んでいたときの時代背景、駐在として住むか、永住として住むか、子供として住むか、独身の大人として住むか、子供のいる親として住むか様々な条件により変わります。そして同じ国でもどの地域に住むかによってもかわります。家族を持ち、小さい子供を育てる立場から考えると治安が良く自然の多いオーストラリアでの生活はとても気に入っています。
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
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