
ドイツの街角から
ドイツ・就業者の最も多い病気と欠勤日数は?
職業別に大差のある欠勤日数
病欠で注目したいのは、各職業部門で大きな違いがみられることだ。
就業不能日数が最も多いのは商業部門だった。例えば、供給・廃棄部門就業者の病欠は38日。 これらの職業は、肉体労働が多く、労働災害の発生件数が平均以上であることが多い。また老人介護のような看護系職業は、特に高いレベルの心理的ストレスにさらされており、疾病率も高い。
疾病率が最も低いのは、大学での教育・研究、経営コンサルタント、ソフトウェア開発などの学術的職業だった。大学の教育・研究職の就業者が2024年に平均7.5日の病欠に対し、供給・廃棄業では5倍以上の長い欠勤日数だ。
「職場の健康増進プログラムは、企業のさまざまな就業者グループ特有のストレスやニーズに合わせたものでなければならないことが明らか」と、シュレーダー氏。
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ドイツでは、就業者が病気になった場合、雇用主から給与全額を継続的に支給される権利がある。この権利は原則として年間最大6週間(30日)まで。その後は健康保険基金が傷病手当金を支払う。欠勤期間が3日を超える病気の届出のみが計算に含まれる。したがって、実際の病欠日数はもっと多くなる可能性が高い。
ドイツ人が病気で会社を休む理由やその背景に関連する観点はいくつかあると思う。
例えば、効率的に仕事をこなすためにも病気になったら休むこと。またドイツ人も日本人と同じく職場での責任感が強く、無理をしてでも出社しようとする傾向もみられる。だがドイツでは制度として体調不良の場合は休暇をとることが奨励されている。
病気の初期段階で休んでおくことは、就業者と企業の両者にとって長期的にみても得策だ。より重篤な疾患を未然に防ぐことにつながるという考え方が浸透している背景もあるだろう。
いずれにせよ、風邪や背中の痛みは、一般的に多くの人が経験する症状であり、無理をすると当事者のみならず仕事にも悪効果をもたらす。ドイツ人がこれらの症状を理由に欠勤する背景には、医療制度や健康意識、労働環境の影響があることが見えてくる。

- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko